海に浮かぶ月のはしっこ

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【読書/ゲーム:FGO】原典と派生作品の関係:原典は君のご先祖様!

スマホゲーのFGOのバレンタインイベントが終わったのでちょっと一息ついております(>_<)

さて、「派生キャラクターにとってモデルとなった原典はどういう立場として考えればいいのか」という少々ややこしい話をしようかなと思います。説明の素材としてFGOを扱っているので、一応プレイヤーではない方向けに補足説明も書かせていただきます。

結論を言ってしまえば…「ご先祖様と呼ぶべきだよね」っていう話です。


FGOFate/Grand Order)をプレイし始めてから早1年半が経過しました。もう流石に初心者は卒業!といった感じですね。
私は2回目の体験ですが、バレンタインシーズンはゲーム内で手に入る「チョコレート」を、縁を結んでいる英霊(バトル用のキャラ)からもらったりあげたりできるイベントが開催されます。

今年からチョコレートを交換する時の台詞がボイス付になって、TwitterのTLも大いに盛り上がった…印象です(*‘ω‘ *)

個人的にはパートナーにしている推し英霊以外だとボイスがついてとりわけテンションが上がったのはモリアーティですね!(*'▽')
喋り方が面白いのです、おじ様。ダイレクト・チョコください宣言…。
悪堕ちさせるのが趣味の悪のカリスマの癖に、主人公に対して「主人公は悪落ちするような人物ではない」と認識している距離感と信頼されてる感。好き。



さてさて。
私の推し英霊の名前はヘンリー・ジキル&ハイド
身体は一個ですが…実質、二人一組の英霊です。
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FGOプレイヤーならご存知でしょうが、クラス(職業)はアサシンで、宝具(必殺技)バーサーカーであるハイドくんに戦闘を代わってもらう事。
アサシン→クリティカル発生率を上げたり、敵のステータスを下げるなどのトリッキーな攻撃を持つ子が多いが素殴りのステータスが低い
バーサーカー→攻撃に偏った性質で、敵への攻撃も通りやすいが弱点が多い


この能力、ちょっと特殊能力過ぎて……。
戦闘では毎回扱いづらさに悩まされております(;´・ω・)

アイテムでこれ以上上げようのないくらいステータスを上げてはいるけれど、元々のレア度も控えめなので基礎ステータスも控めだし、1度の出撃で1回しか宝具使えないし、スキル(技)もジキルさんのままだと効果が著しく低いという、ほぼハイドくん専用なスキル構成(;´・ω・)
交代する事を前提としていても、交代するタイミングにいつも迷う。

HPが高いのが取柄なので主に耐久戦の時に前線に立ってもらっています。うまく扱えば割と最後まで生き残ってボスVSハイドくんで1対1の局面になることも多い。


とまぁ、戦略的な話はさておいて、私は彼を大層可愛がっておりまして。
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イベントで登場する時は大概(体を共有している双子の弟のような存在である)「今笑顔で話しかけてきているジキルさんはハイドくんかもしれない(;^_^)」という叙述トリックに悩まされるんですけど…。
名前を見ただけで悶絶していたくらい、悩んだ挙句「元ネタを掘ろう」、と思う程度にはお気に入りです。
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変身に悩まされているキャラクターは私のフェティシズム
FGOのジキルさんとハイドくんは体こそ共有しているけれど、意識を共有しない別人格同士のようなので、数々のイベントでの叙述トリックでの経験から、私にとって完全にハイドくんは「真面目な双子の兄のフリをして人間関係を混乱させる悪戯好きの双子の弟」という認識…(やってることは可愛くないけど)。
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だがしかし、私の性質として、大体元ネタに手を出したら戻ってこないというところまでお約束。
そして、本当に戻ってこなくなった ( ゚Д゚)

まぁ好きなものが増えたという結果ではありますが、時間を使う主軸は元ネタの方に行っちゃいました。
FGOのプレイ時間もずいぶん減りました。しかも、元ネタを読んだことでアメコミ映画の元ネタになっている事に気づき、そこから派生して『フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス』を読んだことによって、19世紀の西洋文学沼に落ちる羽目になり………今まさにこんなブログを書いているというわけです(ーωー )

けれど、可愛いパートナー英霊の名前を見ただけで悶絶するようなことはなくなったので、結果オーライでしょう。流石に名前を見ただけで心臓が跳ね上がって悶絶するのは疲れる。
好き過ぎるのも劇薬なのです(;´・ω・)

一年ぶりにバレンタインの個別やり取りを聞きましたが、音声付きの破壊力は確かにヤバい。
しかしやっぱり一度元ネタに手を出してしまったせいで今回は私は少し落ち着いておりました。まぁ少し寂しいけれど。


さてようやく本題です。
バレンタインの彼とのやり取りを見ていたら「うーん、彼もやっぱりヘンリー・ジキルの設定を汲んでいるんだなー…」と思ってしまったことにあります。
見た目も若いし性格の印象も分身であるハイドくんの在り方も全然違うように見えるのだけれど、彼もまた元ネタあってこそのヘンリー・ジキルなのです。


いや、だが、しかし、ロバート・ルイス・スティーヴンソン氏の生んだヘンリー・ジキルはこんなにピュアで可愛らしくて紳士的な美青年ではない、と(今の)私は知っている。

ヘンリー・ジキルがこんなに可愛いはずがない。
こんなに可愛いわけがない。こんなにピュアで優しくて、自分の立ち位置と分身の為に心を痛めている、こんなに可愛い男の子であるわけがない。

原典のヘンリー・ジキルはヤク厨の駄目なおじさん(50代)である。物語の事件の総ては100%彼が悪い。
振り回されるアタスンおじ様(語り部としての主人公)が可哀想。
(しかしそれでもジキルおじさんを信じ続け、救おうと全力を尽くすアタスンおじ様が尊い

だとするならば…「130年かけて精製した綺麗なジキルだけを使用しています」と、言うしかない+(*・ω・ *)


ややこしくなってきたので原作…原典?のヘンリー・ジキルはHenry Jekyllと表記しましょう(;´・ω・)
(当ブログに住んでいる原作二次創作のジキルおじさんは"ヤク厨の駄目なおじさん"と表記することとします)

FGOのジキルさんも元ネタと同じ名前で、設定の一部を継承しています。
FGO内の設定だと「モデルになった人物」となっているけど本当にそうだとしたら、"実在の犯罪者ウィリアム・ブロディ"になってしまうのでそこら辺はオリジナル設定かなと。
(「モデルになった実在の人物」については新潮文庫版の翻訳についている解説に載っています)

ジキルとハイド (新潮文庫)

ジキルとハイド (新潮文庫)


でも決して原典のHenry Jekyllとはイコールで結ぶ事が出来ない。
厳密に原典のHenry Jekyllを示すとしたらそれはロバート・ルイス・スティーヴンソン氏の描くHenry Jekyllでしかありえないし、それ以外は全てパスティーシュ、派生キャラクター、もしくはモデルにした別人。

私は原典に忠実な方が好みであることが多いですし、中途半端にモデルにされるとガッカリする事も多い。
原典を愛していれば猶更。好きな作品が実写映画化された時に設定をいじられると狂暴化するオタクのそれです。
私自身がそれを「概念」として愛する事が出来れば許容できるし随分と気持ちも楽になるのですが、そうなかなか割り切るのは難しいのですよ。


でも突き詰めて考えると本当の本当のHenry Jekyllは原作原文の翻訳すらされていない、焙煎すらされてないコーヒー豆なHenry Jekyllだけなので、あまり考えすぎると手を出しにくくなる、というのも事実。
私の言う「焙煎されてないコーヒー豆」っていうのは原書のことです。
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翻訳された時点でロバート・ルイス・スティーヴンソン氏の描いたHenry Jekyllではない、という考え方…ですがろくに英語を読めない私が現在の表現ともズレがある古い英語を読んできちんとロバート・ルイス・スティーヴンソン氏の描いた通りに意味を拾えるとも思えないので、まぁ、翻訳のプロに入れてもらってミルクとシュガーを入れますよね(*‘ω‘ *)

原作原理主義だけどそこまで頭を固くするのは無理な話!ということ。

上記を踏まえるとHenry Jekyllをモデルに派生したキャラクターであるFGOのジキルさんはHenry Jekyllとはほぼ別人。
もしも私が原典を愛しているならそこは譲れない所のはず。(注意:原典を愛してはいるがHenry Jekyllを許してはいない)
だけど、FGOのジキルさんはFGOのジキルさんとしてお気に入りのままです。
彼の場合は私がはっきりと「Henry Jekyllとは別人」として認識しているからこそ、個別でお気に入りのままなんだと思います。

その判断について説明するのは感覚の問題なので難しいけれど、例えば私が歴史上の小野妹子を滅茶苦茶好きだったとして「月ちゃんの大好きな小野妹子氏が登場するゲーム見つけたよ!」と言われて、実際にプレイしたら小野妹子(美少女)が登場して「あのね!!"可愛い女の子みたいな名前のオッサン"だから好きなの!!本当に可愛い女の子にしたら意味ないの!!!!」とブチ切れると思う。
しかしその小野妹子ちゃんが、私の好きな"時折乙女な一面を見せる芯の強い女子"だったら「小野妹子ちゃんというキャラクターとして好き……」ってなることがある…という差です。
(※例に出しただけで小野妹子氏の事はよく知らなくてごめんなさい…本当に大好きなギリシャ神話のハデス神よりはわかりやすいかと思いまして)

これに似た現象が起きているという感じです。
フランちゃんが露骨にこの系統の「キャラクターとして好き…」のパターンです。
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なのだけれど、この"綺麗なジキル"さんも、設定を洗うと原典の遺伝子を垣間見ることが多々あるので、やっぱり「派生キャラなんだなー」と意識する事も多々あります。

だとしたら、この派生キャラ達から見た原典は一体何と呼べばいいのでしょうか?fgoジキルさんの場合、映画で登場した「ジャック・ザ・リッパーとの融合」の影響を受けていますし、「解離性人格障害と結びつけられた」という要素も感じるので直で原典と繋ぐその中間部分にそういた影響の要素を挟まなくてはなりません。

それを図に書くと、メンデルの法則の絵みたいになる。つまり、系譜・家系図です。
原典は家系図で一番最初の部分に君臨する存在…だとしたら、Henry Jekyllはfgoジキルさんの「ご先祖様」かな?(・ω・)と思っています。

(映画で見る事の出来る派生キャラの法則性については創元推理文庫の翻訳にある解説に書かれています)

ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)

ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)


家系図に書き起こせば、FGOのジキルさんは大大大大.......曾祖父であるHenry Jekyll(原典)の遺伝子を130年後の今に受け継ぐ、子孫。
Henry Jekyllは50代の英国紳士なので「おじいちゃん」と言っても差し支えないかもしれない。独身貴族だけど。
ちょっと狡猾そうながら温かみのある雰囲気のロンドン出身のイケオジという設定なので、FGOのモリアーティみたいな「表面的にはフレンドリーだけど全然油断ならないおじ様」なんじゃないかなぁ?…と勝手に思っている。

本当、原典を何度も読むたびに「アタスンおじ様!Henry Jekyllを甘やかしちゃ駄目!」…と思うのだけれど、そこが尊いし、そういう表裏の激しい性格がHenry Jekyllのヘンリー・ジキルたる概念を形作っている魅力でもあるので……いや、でもやっぱりちょっとムカつく(^ω^) ※でもそこが好きかも

まぁは大大大大.......曾祖父たるHenry JekyllとFGOのジキルさんとはマジで別人なので気になったら読んでみてネ、としか…。


そのように原典と派生作品の関係を、DNAを受け継いだ子孫だと言うのなら、拙宅の"ヤク厨の駄目なおじさん"はfgoジキルさんの遠い親戚とも言ってもいいのかもしれない。
全く同じではないが、同じ遺伝子は持っているはずなので…いや、やっぱりFGOのジキルさんをヤク厨の駄目なアラフィフと一緒にしたくない。



余談ですが、もし原典を「大大大大.......曾祖父」と呼ぶなら、不思議な現象も起こると思うのです。それは、原典の該当人物が現代のイメージ概念よりも若くて幼かった時!


私のアイドル、ヴィクター・フランケンシュタインとか!(*‘▽‘ *)ノシ


彼、SF界だとマッドサイエンティストの祖とか呼ばれてるみたいだけど、原典では21歳の大学生です。21歳です。
(※人造人間を創造した時の年齢。物語は「17××年」の25歳のヴィクター・フランケンシュタインが自分の少年時代から現在に至るまでの出来事を説明する形式で展開される。)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタイン (新潮文庫)


FGOにもヴィクター・フランケンシュタインらしき影はあるものの、英霊フランケンシュタインの文字情報でチラッと見かけたくらいなのでどんなキャラクターなのかはよくわかりません。
しかし、とりあえず私が思っているようなヴィクター・フランケンシュタイン(=ヘタレ大学生)ではない、という事はわかっています。
きっと年齢もそこそこいった、お父さん世代くらいの年齢の科学者なんじゃないかなーーーー(と勝手に思っている)(*‘▽‘ *)
(アニメのアポクリファも途中まで観たので、ふわっと後姿は見た気がするのですけど)

21歳の卑屈コミュ障なヘタレ大学生(童貞)を、「貴方のご先祖様ですよ!」って紹介する………この、正しいはずなのに矛盾している感じ、凄く楽しい。

なお、FGOの英霊フランケンシュタインこと、人造人間のフランちゃんは一人の美少女キャラクターとして好きなのですが、多分愛称の一つが「ヴィクターの娘」なのもかなり刷り込みになっていると思います。
snow-moonsea.hatenablog.jp



原典の"通称:怪物"は身長2.5mで滅茶苦茶賢くてよく喋るし、愛読家で繊細で……しかし、卑屈で被害者意識の強いヴィクターくんへの復讐として、自ら選んで悪を演じる姿には独特の健気さを感じるけど、彼女のような愛らしさはないので…(^^*;)

かなり興味本位ですが、ヴィクターくんの200年後の子孫(FGO版ヴィクター・フランケンシュタイン)の姿もきちんと見てみたい気がする。ヴィクターくん(21歳)をおじいちゃんと呼びたい。


……と、案の定ヴィクターくんの話をしてしまったところで、ここらへんで筆を置きたいと思います。
しかし……相変わらずFGO版のグリフィンは何となく存在を示唆されているだけなので、せめて名前だけでも呼んであげて欲しい(;´・ω・)
まぁ……"見えない"からかなぁ…。