海に浮かぶ月のはしっこ

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【雑記】黒に限りなく近いグレーの会社で「目が覚める」チャンスは逃してはいけないのだと思う

会社を辞めました。…いや、ようやく、辞められました。
最後は鎮痛剤と抗鬱剤を服用しながら「嫌だ嫌だ」と言いながら出社していました。
目が覚めてから、客観的に見られるようになって「いやそれおかしい」と言う事が段々とわかってくるようになったからです。

でも、辞めることの罪悪感があって、心の中はめちゃくちゃでした。
辞めた後で段々明らかになっていく酷い話もたくさんありました。だから結果的には辞める事が出来て良かった。

しかし会社から私宛のメールや電話が尽きないので着信拒否させていただきました。
総務の人が味方で居てくれなかったらそんな勇気もなかったけど。

でも総務さんには「早く逃げて」としか言えないです。
そんなときに、やっぱりグレゴール兄さんの事を思い出したりするのでした。
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私は蟲にならなくて済んだ。


会社が酷いというのはここで詳しく述べても仕方がないですし、ここでぐだぐだ言うくらいなら然るべき機関に報告する方がいいので詳しくは言いません。

パワハラの標的になるのが怖かったのであくまでも自己都合だといって退職まで持ってきましたが、パワハラが認められば辞めた後でも会社都合の退職にできるそうなので今証拠を集めて資料を作っているところ。
パワハラは受けていたけれど、私より酷い目にあっている社員もいたし、以前の非正規雇用で働いていた会社のパワハラの方が露骨で酷かったので「パワハラを受けている」という感覚がマヒしていたのですが、冷静になってみるとおかしい事もたくさんあったのですよね。
客観的に見るとターゲットを決めて苛め抜くなんて見せしめとしか言いようがないです。
それを見て「機嫌を損ねないように…」なんて思って酷い目に遭ってもぎこちなく笑って誤魔化す……。
まさに奴隷……訓練された社畜です。

離職票が発行されたら、然るべき機関に相談しようと思います。この世界で生きていくのってややこしくて煩わしい。
結局、なかなか現世とサヨナラするのは簡単にはいかないようです(;一_一)


私は会社には私の事は死んだと思って欲しかったのでまるで遺書を書くように念入りに引き継ぎをして書類を渡したのですが、私へのメールの内容を読むと引き継ぎの書類に一切目を通していないようですね。
毎日鎮痛剤(ロキソニン)と抗鬱剤疲労を誤魔化しながら残業して書類を書いたというのに、残念です。

でも目が覚めて、良かった。

「○○が終わるまでは」「もうすぐ○○だから」と思いながらなかなか辞める事が出来なかったけど、これって冷静に考えてグレゴール兄さんのパターンですね。


グレゴール兄さん…。
フランツ・カフカの小説『変身』の主人公。
snow-moonsea.hatenablog.jp

先日『変身』の初稿がデザインの一部になっているノートを見つけて衝動買いしてしまいましたが、もう一冊欲しいくらいには『変身』は私にとって大切な小説。
snow-moonsea.hatenablog.jp

簡略的に言って、彼はある日突然蟲になってしまったわけですが………私は比喩か、統合失調症による幻覚だと思っている。

彼の置かれた環境は、家に借金があり、学校に行きたいがお金がなくて行けない妹がおり。彼は家の借金を返して妹を学校に行かせてやる為にブラック企業で昼休みを返上するくらいがむしゃらに営業職をやっていて、でも最初こそお金を家に入れた時に感謝されたが慣れてしまって誰も感謝しない…そんな状況に心が折れかけていた…という。
突然蟲になっているので「何事!?」って感じになりやすいのでしょうが、蟲になっているのに会社に遅刻する事を心配し、必死に言い訳を考え、会社で体調不良の休みを認めてもらえない事を嘆き、上司に怒鳴られる事を恐れる……パワハラを体験したり鬱病を体験したりした私としては「あっブラック企業にお勤めの社畜の人……」としか思えないわけで。

でも彼は限界を超えてしまって、蟲になって働けなくなってしまった。


もしも彼を救う事ができるとしたら、「会社を辞めさせて、然るべき病院に連れて行ってしっかり休養を取らせること」だったのだと思う。
でも彼は「家の借金を返し終わったらこんな会社辞めてやる!」と思ってたわけなのですけど、その前に自分が壊れちゃった。
「家の借金を返し終わったら」がなかなか来なかった。でも個人的にはもしも家の借金を払い終えても「妹の学費を払い終えられるまで」と言ってズルズル勤めちゃったんじゃないかなって思うのです。

体感としては、環境に慣れ過ぎると「酷い」「こんなことが許されてたまるか」という事が続いても、その環境の内部に居る時ってなかなか目が覚めないモノだったりするみたいです。
私も「こんなことが許されてたまるか」って何度思った事か…だけど、これが日常だから、私は何もできなかった。嫌だ嫌だと言いながらも鎮痛剤と抗鬱剤を飲んで会社に行ってしまいました。


私は血圧が一気に上がって意識がもうろうとした日に、退職願を書いて翌日出してしまいましたから、一応は「終わり」が設定されました。
だから、その日まで耐え抜けた。…一ヶ月半延ばされたけど。

だけどあの一日を逃していたら、いずれは私もパワハラの一番のターゲットになって、苛め抜かれて、蟲になってたかも。
21世紀の日本はメンタルクリニックも増えて気軽に行けるようになりましたから、幻覚を見たり完全に廃人になる前に鬱病統合失調症の診断をしてくれるかもしれないから、蟲にはならないかもしれませんが。


最終出勤日を終えた日、私は仕事に使っていた靴を捨て、翌日、コート類をほとんど捨てました。
悪い縁は切らなくてはならないのです。

そして私は蟲にはならない。
会社を辞めればグレゴール・ザムザは蟲にならないのです(*・ω・*)


とある社畜の物語、と思って読むとあまりにもリアリズムでしんどいのが『変身』という小説なのですが、だからこそ私の人生観にも大きく影響を与えています。
私はグレゴール兄さんの精神は尊いと思う。けれど、グレゴール兄さんのように、蟲にならないようにほどほどに生きたいと思うのです。