海に浮かぶ月のはしっこ

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【雑記】元社畜、生まれて初めて家出して「逃げるが勝ち」を学ばなくてはならないと知る。

私氏、生まれて初めてプチ家出する。

初めてネットカフェを使った感想と、今回の一件で学んだことなどを書いておこうと思います。

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本体(蟲)を守るグレゴール・ザムザ兄さん。

社畜、家出する。

社畜で再就職のための求職期間中の私。
前職は薄給でしたし、今の失業保険で下りるお金も、ほとんど税金の支払いでなくなってしまうので住まいは実家を頼っています。

でも私は親との折り合いが良くない。

7月上旬の事…父から八つ当たりを受けた上にそれをきっかけに痙攣を伴う過呼吸を起こしてしまったのですが、その様子を親に罵倒されたため、体調を崩して寝込んでしまいました( ゚Д゚)

1週間くらいでしょうか。
病院の予約も忘れるし、楽しみにしていたイベントも行けないし、胃腸の痛みが酷くて、食事も1日1食で、ろくにお風呂も入れなくて、眠っても眠っても疲労が抜けず、でも何もする気になれず、延々と眠り続ける毎日。
生きてるんだか死んでいるんだかわからない。


その状況を更に悪化させる母とのやり取りがあったことがきっかけで、友人の「ストレス環境から距離を置いた方がいい」といったアドバイスもあってプチ家出を決意しました。
今まで聞き分けの良い「真面目な良い子」で過ごしてしまったので、アラサーだというのに未遂じゃないプチ家出は初めてです。

そういうわけで「ネットカフェに泊まる」初体験。

初めてネットカフェに泊まってみた

「ネットカフェで休憩する」という体験は何度かしたことがあります。
まだガラケーが主流だった時代に友人とインターネットを使うのが目的だったり、シャワーを借りるのが目的だったり。

でも一晩過ごす目的は初めて。
国内旅行でも1人5000円前後のビジネスホテルに泊まっていたので機会がなかったんですよね。


利用したのは以前カラオケルーム利用の為に会員証を作った事のある「快活CLUB」さん。
www.kaikatsu.jp
ネカフェソムリエ(?)な友人のオススメでもあります。

鍵付完全個室がウリだとホームページに書かれていましたが…何ぶん急な事だったのでどういうものなのかあんまりよくわかっていませんでしたが…。

つまり、オートロック付、って事( ゚д゚)

そして、普通のネットカフェと違って個室と言いつつ薄い板の仕切りがしてあるだけの簡易個室ではなく、隙間のない箱型の部屋になっているって事。

ネットでググったら滅茶苦茶詳しくレポート書いていらっしゃる方がいました(°▽°)
tamoc.com


場所によるようですが、私の利用した所はナイトパック8時間で2000円ちょっとくらい。

シャワー代込み、電気スタンド・ブランケットレンタル無料、ドリンクバー無料、朝食付き。
洗濯機300円、乾燥機100円。

カフェスペースではその他食事の注文も可能。(部屋もカフェスペースもコンセント及びUSBコンセント付なので携帯の充電も出来る)

お部屋では持ち込みの飲食物以外はカフェスペースで食べるルールがありますが、チェックアウトまで外出も自由なので外食したりコンビニに行ってお弁当買ってくるのもオーケーです。

お部屋も「カプセルホテルってこんな感じなのかな?泊まった事ないけど」といった感じで、床はカフェのソファ席のようなマットが敷かれていて、座椅子とクッションが付いている。

何これ??
ネットカフェって時間制簡易ホテルの事だったの???(・Д・)

逆にビジネスホテルになくてネットカフェにある設備もあります。コミックスペースから漫画を借りて読める事と、部屋に自由に使えるパソコンがある事。
まだ新しい設備だし密閉空間だからか、少し壁紙の臭いが気になったけれど許容範囲。

コスパ最高か。


適当に撮った写真…

パソコンの画面…とても大きい。
DVD持ってきて観たら最高でしょうね。

カードキーでロックを解除して出入りしたり、カフェスペースでお茶をもらってまったりしたり……普通に旅行でホテルに泊まっている気分。

私はここで一晩願書を書いたり英語の勉強をしたりしていましたが、家にいるよりずっと集中出来ました。

無料の朝食はトーストとバターとポテトの食べ放題。追加料金でカレーなどを出してもらう事も可能です。
あまり胃腸の調子が良くないので少しだけいただいて、あとはコーヒーを飲みながら過ごしました(*'ω'*)

これで2000円ちょっと?
至れり尽くせりで最高ですね。もうプチ家出も怖くない(*'ω'*)


だけど、その反面で「何で私がこんな事(家出)をしなくちゃならないの」という悲しい気持ちや、「でもこれは今まで「真面目で良い子」で振舞ってきた私の、精一杯の「真面目で良い子」のストライキ」と奮い立たせる気持ちとで、全く眠ることが出来ませんでした。

初めて友人宅に逃げ込んだ

私がトラブルでやむを得ずネットカフェで寝泊まりしている事を知った友人から「うちに泊まりなよ!」という申し出をいただきました。
その日はハローワークに書類を出しに行ったり、家に書類を取りに帰って母とひと騒動あったり、二度目のハローワークでたらい回しに遭ったりして色々と大変な目にあいました(-ω-;)

母は(一応連絡は入れていたというのに)私が家出したことが余程ショックだったのか、軽くパニックになっていました。
それにつられて私も過呼吸の酷い発作で苦しむというトラブル発生。(私の過呼吸の発作なんて滅多にあることではなく、年に1~2回あるかないか。こんなに短期間で2回もあるなんて相当に珍しいことです。それだけ私なりに追い詰められていたのでしょうけど…。)

そのせいでだいぶ時間がかかってしまいましたが、父のことは任せていいという話になって、私は家を後にしました。


友人の申し出に甘えることにした私は新幹線に乗って関東の外へ……。

友人宅に到着した時にはもう夜になっていましたし、しかも短時間で色々な事がありすぎて大分混乱していました。
その結果、あまり眠ることが出来なかったようです。


翌日もその混乱は引きずっていて、現実のような現実じゃないような、妙なふわふわとした感覚でした。

友人宅は長野。

私の住む街には見慣れない田園風景が広がります。空気も全然違うみたいです。

友人のご家族も優しく接してくださって、考古学博物館や山の中の素敵なレストランに連れて行ってくださいました(本当に感謝……(T_T))

梅雨明けしていなくてあいにくとお天気は良くなかったけれど、関東と比べると随分涼しく感じました。
なんでだろう?湿度も同じくらいだと思いますが長野の方が蒸し暑くない。

関東はアスファルトやコンクリートに囲まれていて土がないから、保温されやすいのかも。

そうして優しい自然の中で過ごさせていただくこと2泊3日。初めての家出で友人宅に逃げ込んで、帰る日がやってくる。

私自身の精神がふわふわしていたのもあると思いますが、あっという間の数日間でした。


でもハローワークはきちんと願書を出してから来たけれど、家の問題は山積みのままで逃げてきちゃったけど、本当に大丈夫?
新幹線の中では何だか不安で、そのままネットカフェに向かうという選択肢も頭の隅にチラついていました。

逃げた結果は、そんなに悪いものでもなかった。

帰宅後、母は約束通り父と話をしてくれたらしいです。
父から一応、八つ当たりしたことへの謝罪があって、「でもいつまで持つかな…」という気持ちは拭えないものの、少し状況が好転したようです。

多分、いつもの私なら自分の体調が回復するまで引きこもってただ耐えていたと思いますが…。
結果として逃げた事は正解だったようです。

でもこの結果は少し意外でした。
逃げたところで失業者である私に一人暮らしする力も経済力もないのだから、どんなに逃げても最終的に帰ってくるのは実家です。帰ってくる所が同じなら、わずか数日家出したくらいで何も変わりゃしないと思っていたのですが…。


けれど確かに「逃げる」ことも一つの「アクション」です
実際に体を動かしているか動かしていないかに関わらず、「耐える」という選択肢は「動かない」と同義なのです。

私は今まで「耐える」しか選んだ事がなかったけれど…「逃げる」事が正解だという事もあったのですね。

「調教された社畜≒真面目な良い子」=逃げない

そういえば私、7年間勤めた会社を辞めました。

でも、前職はブラックに限りなく近いグレー会社であり、友人やハローワークに話すと「そんな環境でよく続けてきたね」と言いますし、私も「こんな事なら、ロキソニン抗鬱剤を飲まないと会社に行けなくなるまで耐えずに、もっと早く辞めればよかった」と思いますが……。
調教された社畜は、逃げられない。

それは洗脳も大いにあると思います。
更に、私の場合は前々前職のパワハラの方が酷かったので「逃げたところで今より地獄かもしれない」と自分に暗示をかけてしまった。


「逃げ場がないのなら、逃げた先に地獄しかないのなら、耐える方がまだマシだ」と。
そして、「逃げる」ってかっこ悪い気がするし、失業の期間が生じれば自分に不利になる気がするし、それに私は「会社に行っている、ちゃんと動いている」、と思っていた。

だけど「調教された社畜」になってしまった後での「会社に行く」という行動は、体は動かしているかもしれないけれど「現状に耐える」だけでアクションは起こしていない。


それなりに安定した企業の終身雇用であればそれも悪手ではないかもしれないけれど……。
7年勤めてボーナスは1度きり、1万円が出ただけの退職金のない会社で、パワハラと八つ当たりのためのサンドバッグにされる毎日を、ただ耐えていたのは悪手だったと思う。

でも社畜になってしまうと、洗脳されているから「辞める(逃げる)」という選択肢ってなかなか選べない。思考が停止してしまうのだろうか。「おかしい」という事に気づけない。
そこだけが自分の世界だから、外の世界のことに気づけないのだと思う。

そして、1日でも仕事に行かないと翌日もっと大変な思いをするから……それが終わらなければ怒られるから……残業すればしつこく問い詰められるから……。
仕事に行くことを止めることはできない。耐えようとしてしまう。


例えば…ほら。

ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

「しまった!」と、彼は思った。もう六時半で、針は落ちつき払って進んでいく。半もすぎて、もう四十五分に近づいている。目ざましが鳴らなかったのだろうか。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

だが、今はどうしたらいいのだろう。つぎの汽車は七時に出る。その汽車に間に合うためには、気ちがいのように急がなければならないだろう。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

……なんで?
毒虫に変身しているのに??

どうして会社に行こうとしているの???

きっと店主は健康保険医をつれてやってきて、両親に向ってなまけ者の息子のことを非難し、どんなに異論を申し立てても、保険医を引合いに出してそれをさえぎってしまうことだろう。その医師にとっては、およそまったく健康なくせに仕事の嫌いな人間たちというものしかいないのだ。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

あと五分で七時十五分になる。――そのとき、玄関でベルが鳴った。「店からだれかがきたんだ」と、彼は自分に言い聞かせ、ほとんど身体がこわばる思いがした。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

――それは支配人自身だった。なぜグレゴールだけが、ほんのちょっと遅刻しただけですぐ最大の疑いをかけるような商会に勤めるように運命づけられたのだろうか。
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

とんだブラック企業じゃないですか。

「私はすぐ自分で店へいきます。そして、すみませんがどうか社長にこのことを申し上げて下さい」
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 変身 DIE VERWANDLUNG

それでも、どうして会社に行こうとしているの???
明らかに身体の様子がおかしいのに、どうして会社に行こうとしているの??
家の借金とか、そういった事情もあるのはわかるけれど、君の体はそれどころではないのでは???

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

…なんて思うんですけどね(;^ω^)

それは第三者の立場だから思える事。私もロキソニン抗鬱剤を飲まないと会社に行けないくらい疲弊していたのに、何故か「辞める」という判断に至るまで相当な時間がかかってしまいました。

多分、「厄年の厄払いに行った」事と「翌日、パワハラで血圧が170超えた」という二つの事象が重なったから「辞める(逃げる)」という選択肢を選んだ。
きっと、何事もなかったら「耐える」という選択肢を取っていたでしょう。


家でも会社でも、私はそこがストレス環境であると理解していても、耐えてしまう。逃げない。逃げられない。
だからじゃないですかね?15年ほど前のある日、父に勝手な思い込みで誰も悪くないのに私が怒鳴りつけられた日。目の前が砂嵐になって、全身がしびれて重くなって、どんなに呼吸をしても息苦しさが解消されない症状に見舞われた。

それは、極度の緊張や強いストレスに晒されて許容値を超えると過呼吸や全身の痺れなどの症状が起きる、過換気症候群の最初の発作。
20〜30分くらいのピークを過ぎれば徐々に回復し、1〜2時間くらいで普通に戻るのですけど、ピークの時は身体が痺れて異様に重く感じるし、脳みそがジンジンするし、いくら息を吸っても呼吸が出来ないし、酸欠の為に視界はどんどん砂嵐になっていって「死ぬかも…」と思うくらいの身体の異常を感じる。


私の発作の9割は、父に怒鳴られることで発症している。

それでも私はいつも「耐える」という選択を取ってしまった。
ある種、ブラック企業と同じで洗脳かもしれないですが…。

学校でいじめられていて生きることもしんどくて耐え難くて、それでも誰にも助けてもらえなかった時、「我慢して行きなさい」「時間が解決するから」「いじめっ子と同じ学校に行かなくて済むように勉強しなさい、だから学校は休んじゃダメ」と言って不登校にさせてくれなかった両親の言葉は………きっと間違ってはいなかったのでしょうけれど、私の頭に洗脳として残り続けて「逃げる」という選択肢を見えなくしてしまったのかもしれない。

私は「逃げるが勝ち」を学ばなくてはならない

私が「逃げちゃ駄目だ」と思う、その後に続く言葉は「逃げても無駄」「逃げるところなんてない」「結果は同じ」なのだと思う。

「逃げちゃ駄目だ」の次に「戦え!」が来ればいいのですが、(口論で)戦おうとすると大概途中で過換気症候群の発作を起こしてしまうのでお互いに冷静に話し合う環境でないと戦うことが出来ません。
そうやって、私はずっと耐える事しか選んでこなかった。
でも耐えるだけでは現状は変わらない。わかっているつもりだったのに、「耐える」以外の選択肢は「戦う」しかないと思い込んでいた。

「逃げる」も行動の一つだったのだと、ようやく気付いた…そんな気がします。
「逃げる」もアクションなので、状況に一石を投じている。それが状況にどんな影響を与えるのかはその時によって違う。

けれど「耐える」はいつもと同じ行動。
「逃げる」は普段と違う行動。

だから、少なからず「耐える」よりも現状に影響を与える。
大人になると、耐えるだけでは解決にならない事がどんどん増えてくる。特に、自分の身を守るために。
耐えるだけではただ搾取され続けるだけなのだ。


そして初めて私が「逃げる」を実行した結果は明らか。
逃げて良かった。会社も、家出もね。

家出はもしかしたらうまくいっていなかった可能性もあるけれど、あのまま部屋で体調が回復するまで耐えているよりは私の気持ちが少し変わったことでしょう。


多分、私は十分に耐える事をしてきたから、今度は「逃げるが勝ち」を学ばなくてはならないのだと思う。同じ年に会社と家という二大環境で「逃げるが勝ち」を体験したのです。


きっと今年はそういう年なのです。
「逃げる」という行動を、選択肢の一つに加えましょう。