海に浮かぶ月のはしっこ

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【M.S.F.P.魔法学校】第1話の原作ネタについて

原作の話をさせていただこうかなと思っています。
元々このシリーズはマッドサイエンティストの祖たちの物語をなぞる形で、彼らの魅力を伝える強火のプレゼンをするつもりで描き始めました。
なので、ちまちま混ぜている原作ネタをあとがき代わりに書いて行こうかと思います。

原作に少しでも興味を持っていただければ幸いです。

★【M.S.F.P.魔法学校】は文学作品の「マッドサイエンティストの祖」たちを14~5歳の少年に変え、ハリーポッター風の世界観の魔法学校生徒にして交流させるクロスオーバーパロディです

原作について

原作は勿論、「メアリー・シェリー著『フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス』(1818年)」です。

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

恐らくヴィクターくんは「世界で一番有名なマッドサイエンティスト」だと思いますが、一時期映画沼に居た私からすると一般的にはユニバーサル映画のイメージが強いんじゃないかなと思っています。人造人間を生み出し、「生きてる!生きてるぞ!」と高笑いする科学者のイメージ。ユニバーサル映画版のヴィクターくんはヘンリー・フランケンシュタインというんですけどね。

でも個人的には原作の彼の人格はだいぶ違うように感じます。
原作のヴィクターくんの職業は「大学生」であり、博士ですらない

原作のストーリー構成は、入れ子構造になっています。
これは探検隊の隊長ウォルトンが姉に宛てた手紙で、ウォルトンが救出した20代半ばの青年ヴィクター・フランケンシュタインの話を聞いている、という形になっています。なので地の文は語り部としての「現在のヴィクター」で、主人公は「過去のヴィクター」です。
この語り部のヴィクター(過去も相当だけど…)がなかなかポンコツで、地の文の途中で聞き手(ウォルトン)の反応を気にしたり、突然泣き出したり、ネタバレをかましてくる。
斬新すぎる。

こんな調子なので、原作のままのメディアミックスは難しいんだろうなぁと思います。

「賢者の石」の『フランケンシュタイン』原作ネタ

「賢者の石」は落書きのつもりでネームなど作らず描いていました。…こんなに長く続くとは思わなかったもので。

錬金術に心を奪われていた原作のヴィクターくんが「科学を知る」代わりに「魔法学校に入学する」という事象にした世界が、「ヴィクター・フランケンシュタインと賢者の石」です。

錬金術&オカルトオタク

第1話 5P~6P の回想はほぼ原作と同じ内容です。
今作では魔法学校進学前の話として描いていますが、原作では14歳くらいの時の話。
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旅行先でコルネリウス・アグリッパの本に出会ったヴィクターくんは父親に嘲笑されたことをきっかけに錬金術にのめり込んでしまいました。
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「賢者の石」に憧れを抱いて実際に作ろうとしたり、霊魂の召喚を試したり。14歳なのでリアル中二病ですね(*'ω'*)

でも原作の彼は、ある日家に来た科学者から最新の科学の話を聞いて錬金術が現在ではただのオカルトだと知り、心底傷つきます。

無理矢理留学させられて泣きべそをかく

ヴィクターくんはジュネーヴの名士の家に生まれた長男ですが、彼の両親は元々海外を転々と渡り歩く生活を送っており、ヴィクターくんもイタリアで生まれました。

この世界では科学者から科学の話を聞いて心が折れる前に「魔法学校から入学推薦状が届く」という形でイギリスに留学することになります。
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原作では17歳の時に半ば無理矢理インゴルシュタットの大学に留学させられる

でも原作のヴィクターくんは非常に内気な性格(所謂コミュ障)で、馬車でインゴルシュタットまで運ばれていく際は延々と鬱々していたことが何行にも渡って書かれています笑
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なので、馬車の中で泣きべそをかいているこのシーンも原作ネタなのです。

遅れて留学してくるヘンリー・クラーヴァル

ヘンリー・クラーヴァルはジュネーヴの学校で知り合った親友。アーサー王伝説をはじめとする詩や文学が好きなアクティブな文学少年。
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でも、クラーヴァルの父は実業家であり、ラテン語ギリシャ語といった教養に理解を示してくれるタイプではありません。

ヴィクターと同じ大学に進学することを望みましたが、父親に反対され、二年かけて説得し、遅れて進学してきたというエピソードがあります。
この世界では年齢が若く学校から推薦状をもらっていることもあり、そこまで時間差はないのだけど、クラーヴァルは転入生という形で魔法学校に進学したことになっています(*'ω'*)
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義理の妹兼許嫁との手紙のやり取り

今作では名前が出てきてないのですが、金髪の妹は「エリザベス・ラヴェンツァ」といいます。
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彼女はヴィクターくんと年齢も一緒で、幼い頃にフランケンシュタイン家に引き取られてきた義理の妹です。原作では留学の直前に病床の母親から将来はヴィクターとエリザベスに結婚して欲しいと言われました。つまり、義理の妹で許嫁。

半ば無理矢理留学させられる直前に文通の約束をするのですが、ヴィクターくんは研究に没頭するあまり手紙の返信を疎かにしていたようです。

ヴィクターくんには友達がいない

クラーヴァルが進学してくるまでの間、ヴィクターくんは一人も自分で友達が作れませんでした。
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それは原作でも同じです。
自分の好きな事に関しては猛烈に喋るんですけどねぇ…。

外国語を学びたがるクラーヴァル

そんなヴィクターくんとは真逆に社交的なクラーヴァル。
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物語の終盤、2人でイギリスを旅する場面がありますがその時の状況も相まって引きこもりたがっているヴィクターくんとは対照的に、クラーヴァルは多くの人と知り合いになりたいと願っていました。
そういう次第で、様々な言語を習得しようとしていた様子が描かれています。アクティブだなぁ…。

錬金術オタクを馬鹿にされたり才能を見出されたり

このシーンに登場している先生は第2話で名前が出てきますが「ヴァルトマン先生」といいます。
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…といっても、当初は今作がこんなに長く続くとは思っておらず、この先生も当初はモブ教師として描いたのですが…。

原作では大学進学後、教授から錬金術オタクだった少年時代を馬鹿にされます。まぁ、ヴィクターくんの生きた時代は18世紀末という設定で、産業革命前とはいえその頃には錬金術が時代遅れのオカルトと馬鹿にされるくらいには科学技術が進歩していたようです。「コルネリウス・アグリッパの弟子」と呼ばれて嘲笑される始末。
でも、ヴァルトマン教授だけはヴィクターくんの話を聞いて彼の才能を花開かせたのでした。…けれど、数奇な運命をたどった後である語り部のヴィクターは「彼と出会わなければ良かった」と言います。彼がヴィクターくんの才能を引き出さなければ、ヴィクターくんはただのオカルトオタクのままでしたからね。

2年で命なきものに命を吹き込む力を得る

今作ではわずか2年で「賢者の石のようなもの」が完成したと言っていますが…
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原作ではヴィクターくんが入学して2年後(19歳の時)に命なきものに命を吹き込むことに成功したそうです。
原作は魔法なんかない世界だぞ。どういうチートだよ。

「賢者の石」の別作品の原作ネタ

ハリー、ギャビー、ヘイスティの三人組

今作ではほぼほぼゲスト扱いですが三人組が描かれています。
中でもハリーは主人公格です。
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彼らは『フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス』の登場人物ではなく、出典や正体は、「ハリーの物語」で描けるといいなと思っています。

原作でも、この三人は幼少期からの親友同士です。
この世界では愛称やファーストネームで呼び合っていますが、出典元を読んだことがある人はすぐにピンと来るのではないかと思います。
ギャビーという愛称は元の名前が長いので略称型の愛称を調べて付けました。一方、ハリーという愛称は翻訳版ではなかなか訳されていないのですが、原作の原文ではギャビーが口ではファミリーネームで呼ぶものの、心の中ではハリーと呼んでおり、子供の頃はそう呼び合っていたことが伺えます

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