海に浮かぶ月のはしっこ

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【映画】「フランケンウィニー」のヴィクターくんが原作のヴィクターくんより勇敢で笑う

先日、渋谷のTSUTAYAに行った時にハロウィン特集棚が出ていて、「フランケンウィニー」が平置きされていました。
昨日ようやく思い立って観た(4回目くらいだとは思うけど)ので「フランケンウィニー」の思い出話と、原作の話を混ぜてもそもそ書こうと思います。
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観た当初は「死んだ生き物を蘇らせるには主人公幼すぎない?」って思ったけど、19歳で「命なきものに命を吹き込む方法を発見した」と言ってる原作も大概にしろだよね(;^_^)。可愛いけど。


「フランケンウィニー」っていうのはディズニー映画の一つなのだけれど、監督ティム・バートン氏のストップモーションアニメーション映画と言った方が分かりやすいと思います。

Blu-ray版は1984年の実写版フランケンウィニーが映像特典でついてくる…(*‘ω‘ *)
実写版の方が物語がシンプルでサクサクと進みますが、主人公のヴィクター少年が超かわいいです。
ストップモーションアニメーション版の「フランケンウィニー」はそれに怪獣映画要素を足して長編にしたもの…というイメージでしょうか。実写映画版の「フランケンウィニー」は手に入りにくいので、観たい場合はストップモーションアニメーション版の「フランケンウィニー」のBlu-ray版を購入するのをおすすめするよ!

最も、原作、原作と言ってはいますが、この二つの映画はどちらかというと1931年版の「フランケンシュタイン」にインスピレーションを受けた作品…というイメージが強い映画です。

↑毎度おなじみのこれね。

でも主人公の名前が1931年映画版は親友と名前が交換されて「ヘンリー・フランケンシュタイン」になっているのが、「フランケンウィニー」では原作小説の「ヴィクター・フランケンシュタイン」に戻っているのが「おっ?」となります。

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

↑原作。このブログでこの本を貼るの何回目だろう…



「フランケンウィニー」のストーリーは少年ヴィクターが事故死した愛犬のスパーキーを雷の力で蘇らせてしまう…という話。
死者を蘇らせる、という部分だけをテーマにしている感じです。
映画の中で、少年ヴィクターは最初にスパーキーを失うシーンの他に、"蘇らせてしまったが故に"またスパーキーを死なせてしまうシーンがありますが、「"2度殺す"ってこういうことかー」とぼんやりとまた「鋼の錬金術師」を思い出していました…。

原作を読んだ時もこの作品を思い出したのだけれど、やっぱり「フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス」のテーマとか類似するんでしょうかね~(・ω・ )

この「フランケンウィニー」、私は映画館へ観に行っています。
その他、私にしては珍しくビックロで開かれていた展示会にも足を運び、ユニクロコラボのチュニックTシャツを気に入ってよく着ていた覚えがあります。このTシャツが可愛くて。劇中に出てくるペットの墓場の総柄なのだけれど、パッと見何の絵柄なのかわからなくて、なかなか洒落ていて。
絵柄がポップなのでオカルティックなイラストだけれど可愛く着られるTシャツでした(*‘ω‘ *)
あと、この展示会でガチャガチャで当てたスパーキーのマスコットキーホルダーを最近までスマホケースにつけていましたね。使っているうちにパーツがどこかいってしまってサヨナラしたのだけれど…。


ずいぶん思い入れがあるように見えるかもしれないけれど、思い入れというよりは個人的な期待値が高かったんです。

ティム・バートン氏絡みのストップモーションアニメーションといえば…
「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」

ティム・バートンのコープス・ブライド」
ティム・バートンのコープスブライド [Blu-ray]

ティム・バートンのコープスブライド [Blu-ray]

前者は若干哲学的な内容というか、初見では何が言いたいのかわからなかったんですが、後者はわかりやすい。
でもどちらも、ストップモーションアニメーションです。つまり、人形を数ミリ単位で動かして写真を撮り、アニメーションにしている。…気が遠くなる(;´・ω・)
「フランケンウィニー」も同じ技法で撮られているのですが、いや…そんな馬鹿な、と思うくらいぬるぬる動きます。やばいです。

当時はなかなか秋~冬の間に行けなかった東京ディズニーランドで秋・冬限定のナイトメア・ビフォア・クリスマスverのホーンテッドマンションにようやく行けた記憶が新しく、少々浮かれていた部分があります。キングダムハーツでも「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」の可愛くてポップでオカルティックで不気味な雰囲気が大好きでした(*‘ω‘ *)

そんなわけで、個人的期待値はうなぎのぼり。実際に面白い映画ですよ!
でも、多分1931年映画版フランケンシュタインを観ていないと面白くないかもしれない…。



1391年映画版フランケンシュタインと言えば…
死体を乗せた板を鎖でつなぎ、てこの原理で屋根の上まで持ち上げると、空に放った凧に雷が落ちる…そんなシーンが有名ですが、「フランケンウィニー」にはあります(*'▽')
原作には…ないです。……ヴィクターくんが説明を省略したからね(;´・ω・)

わたしは生命を吹き込むための道具を取り揃え、足元に横たわる物体に生命の火花を注入しようとしていました。時刻は午前一時をまわろうとしています。雨が陰気に窓を打ち、蝋燭は今にも燃え尽きようとしていたそのとき、半ば消えかけたその不確かな明かりのなか、足元に横たわった物体の、くすんで黄身がかった瞼が、まずは片方だけ開くのが見えたのです。

メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P109


1391年映画版フランケンシュタインと言えば…
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「生きてる!生きてるぞ!」というセリフが有名だけれど、「フランケンウィニー」にはあります(*'▽')
原作には…ないです。……人造人間が目を開けた瞬間に逃げたからね(;´・ω・)


1391年映画版フランケンシュタインと言えば…
クライマックスに風車に火がつけられるシーンが有名だけれど、「フランケンウィニー」にはあります(*'▽')
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↑プレゼンのために書いた資料
原作には…ないです。……風車のふの字も出てこないんだけどどこから風車出てきたんだろう?(;´・ω・)

あと、隣の家のエルザの愛犬ペルセポネギリシャ神話の冥王の王妃の名…凄い名前。)がスパーキーと触れ合った時に頭の毛にメッシュが入るシーンがあるけれど、あれ1931年版の続編「フランケンシュタインの花嫁」の怪物の花嫁のパロディよね。

っていうかヴィクターくんが息子さんに名前取られたのこの映画のタイトルのせいなんじゃないのか…?
(原作の2章ベースの映画なんだね…やっぱりちゃんと観ないと…(;´・ω・))


そんな1931年映画版フランケンシュタインベースの「フランケンウィニー」ですが、1931年になかった要素は「怪獣映画要素」!
なんか何が出る、というのはまぁ一目でわかるので実際に観て確かめて欲しいのですが、メインじゃない怪獣に「大アマゾンの半魚人」を意識しているような気がする怪獣も出てくる。

更には、恐らく包帯だらけの生物とそれを復活させた男は1931年版フランケンシュタインと同じ制作会社(ユニバーサル)の「ミイラ再生」のパロディだと思うのだけど、これもきちんと観て確認していないから、観なくちゃいけないレトロ映画が増える増える…(@_@)

こういうことをされるからレトロ映画をいくつ観ても情報が足りなくなってくるのですよね(;´・ω・)<気が向く限りは見続けないと…


さて、そんな怪獣たちを前にして、少年ヴィクターは勇敢に立ち向かっていくわけですが、原作を読んだ後の初回視聴の率直な感想は


原作のヴィクターだったら確実に逃げてたな(・_・ )


町を襲っている怪獣は少年ヴィクターが蘇らせた生き物ではないですし、死んだ動物を蘇らせる方法を確立させた少年ヴィクターの研究を勝手に盗んだ者たちの仕業なので直接的に彼は加害者ではないです。
勿論、死んだ動物を蘇らせる方法を確立させた事が彼の罪ではあるのだけれど、原作のヴィクターくんならきっと「僕のせいじゃない!(:△; )」と言って逃亡。もしくは、怪獣の姿を見た途端にパニックになって失神(彼は割とよく失神する。お坊ちゃん育ちだからかな?)。

確かに直接的には悪くないんだけど、「いやでも大元の原因作ったの君だからね…」というところで、卑屈でちょっと残念なのが原作のヴィクター・フランケンシュタイン(19~24歳)。


「フランケンウィニー」の少年ヴィクターは決して活発な性格ではないけれど、心優しく、こういったところで勇敢さを発揮できる主人公です。…見るからに子供なんだけど。

……元祖ヴィクターくんが勇敢さで負けるのはまぁ何となくわかってたよ(;^_^)