海に浮かぶ月のはしっこ

映画や文学作品、神話関連その他の事をおぼえがきしますよ

【海外通販】本当に君がいるような気がして。原作に登場していそうなアイテムを模したグッズの話。

私、海外通販、結構好きです。
ここ数年は専らEtsyの利用でそれ以外の通販はしていないのですが。

英文学をサブカル的に愛する私。
ここ4〜5年は英文学でオタ活をしています。

最近Etsyで素敵なものを買ったので紹介します。

Etsyとは?

まずEtsyというものを説明しないといけないですね。Etsyは海外版minne、creemaというイメージの通販サイトです。
マージンを支払えば誰でも出店できるので、プロアマ問わず、ハンドメイド作家さんなどのクリエイターが出店している事が多いです。

ハンドメイドの博覧会というか…グローバルなので本当に色々なジャンルのアイテムが手広くたくさんあります。

眺めているだけでも本当に楽しいです。

ただ、Etsy自体は日本語対応ですが海外の作家さんやお店とやりとりする時は基本英語です。
私は英語ができないのでGoogle翻訳などで何となくやってしまっていますが(苦笑)

買ったもの

今回Etsyで買ったのはブックマーカー(しおり)。
でもただのしおりじゃなくて、ブックマーカー風のチケット類のレプリカ。

何が凄いって、英文学の中に登場するチケットやその他を模したものなのです!


1番楽しみにしていたのが、LiteraryCraftParlourさんの「ヴィクター・フランケンシュタインの学生証」
www.etsy.com

メアリー・シェリー著『フランケンシュタイン;あるいは現代のプロメテウス』をモチーフにしたアイテムです。

世界一有名なマッドサイエンティスト、ヴィクター・フランケンシュタインはわずか19歳で生命の神秘を解き明かした天才大学生なのですよ。
博士号?そんなものはない。

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最高という言葉しか出てきませんが、デザインの細かいこと!

17歳の時に無理矢理留学させられたインゴルシュタットの大学の学生証です。

十七歳になったとき、わたしはインゴルシュタットの大学で学ぶことになりました。両親がそう決めたのです。それまではジュネーヴの学校に通っていましたが、教育の仕上げに祖国以外の習慣にも触れるべきだと父が考えたのです。そこで、近いうちに旅立つことが決まりました。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P80

自分を運び去る馬車の座席に腰を落ち着けると、わたしは鬱々とした気分のまま何から何まで悲観的な物思いにふけりました。これまでずっと気心の知れた快活な人たちに囲まれてきたわたしは、相手にも同じ歓びを与えることを心がけてきましたが、そのわたしが今は独りぼっちなのです。これから入る大学では自分で友人を作り、自分で自分を守らねばなりません。けれども、これまでの生活が世間から隔絶され、何もかもが家庭内でまかなえてしまえたものだから、わたしはどうしようもないほど人見知りです。知らない顔を受け付けられないのです。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P85

結局彼は卒業する事はありませんでしたが…(諸事情から休学して一度実家に戻り、それっきり大学に戻る事はなかったので…)

明確な年は原作には書いてないはずなので、入学年と卒業年は制作者さんが独自に計算して「このくらい」としたものだと思います。
指導教授がヴァルトマン教授!

設定に忠実で喜ばしい限りです(*´꒳`*)




もう一つのショップBookEphemeraさんでは大量に購入しまして、おまけまでいただいてしまいました!
(おまけはケースが付属していません)
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購入したのは、
H・G・ウェルズ著『透明人間』の「グリフィンのブランブルハースト駅行きの切符」
www.etsy.com

H・G・ウェルズ著『モロー博士の島』の「エドワード・プレンディックの船のチケット」
www.etsy.com

ガストン・ルルー著『オペラ座の怪人』の「5番ボックス席のチケット」
www.etsy.com

ブラム・ストーカー著『ドラキュラ』の「ジョナサン・ハーカーのウィーン行きの切符」
www.etsy.com

メアリー・シェリー著『フランケンシュタイン;あるいは現代のプロメテウス』の「ヴィクター・フランケンシュタインの「フランケンシュタインの怪物」の材料タグ」
www.etsy.com

アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズ』シリーズの「シャーロック・ホームズの名刺」
www.etsy.com



おまけでいただいたのは説明書きがなく、ショップにもないものがあったので恐らく、ですが…

ジェーン・オースティン『エマ』の「ウェディングカード」(未読なのでどんなものなのか不明)
www.etsy.com

J・K・ローリング著『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の「騎士バス<ナイト・バス>のチケット」
(非売品らしく、ショップページがない)


原作のネタがわかる人にとってはたまらないものばかりです(*'ω'*)

その中でも一番うれしかったのはH・G・ウェルズ著『透明人間』の「グリフィンのブランブルハースト駅行きの切符」
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裏には最初の事件の舞台になった「馬車馬亭」の広告が描かれています。

寒くわびしい二月も上旬のある日であった。身を指すような風がその年の最後の雪を吹きあおるなかを、丘を越えて見知らぬ男がやってきた。ブランブルハーストの駅から歩いて来たらしく、厚い手袋をした手に黒革の小さなカバンを提げていた。全身をすっぽり外套にうずめるようにして、フェルトのソフト帽で顔を隠していたが、てかてか光る鼻先だけはよく見えた。方から胸にかけてばかりでなく、手にしているカバンにも、うっすらと雪が積もっている。生きた心地がしないとでもいうようなようすで、彼は駅馬車亭という宿屋によろめくように辿り着いた。カバンを投げ出すと「火だ!早く暖かな部屋を用意してくれ!」と大声で言った。
『透明人間』Herbert George Wells (原著),橋本 槇矩 (訳),岩波書店,1992年,P9

本当に君がいるような気がして。

フランケンシュタイン』の主人公ヴィクターもそうですが、『透明人間』の原作に関連するグッズって作っている人本当に少ない。
映画の影響が大きいのか、ほとんどが映画に着想を得ているグッズばかりです。
特にグリフィンは原作ではファーストネームがないので、ファーストネームが書かれているとどの派生作品が出典なのかわかってしまうんです。
また、ヴィクターくんは原作では大学を卒業する前にフェードアウトしているので博士号を示す記号がついていると「違うな」って感じがします。

(ちなみに、意外と原作に着想を得たグッズに恵まれているのは『ジキル博士とハイド氏』です)

そんな中、こういったものを作ってくれる作家さんがこの世界にいる事が本当に嬉しいのです。
ですが、それ以上に原作の中に登場するかのようなアイテムを手にすると、彼らが本当にこの世界を歩いていたんじゃないかっていう錯覚にさせてくれることが嬉しい。
私が初めてイギリスに行って彼らの歩いたとされる道や場所を歩いた時、「彼らはこんな景色を見ていたんだ」と思ったあのふわふわとした高揚感に近い。

彼らはフィクションの中の登場人物だけど、大好きだから、もしかしたら本当にいたかもしれないっていう錯覚を得る事はとても素敵な事。
この感覚を大切にして、私も自分を含めた誰かをそんな感覚にするグッズを作りたいと思ったのでした。

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