海に浮かぶ月のはしっこ

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【ドール】フランケンシュタインを作る その4 -顔を作りましょう

私が勝手に「可愛い」と思い込んでいる「フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス」(1818年)の主人公ヴィクター・フランケンシュタイン(21歳)くんをオビツ11で作る話。

カスタムドール制作において「命を吹き込む作業」とも言える頭部制作作業工程です。
っていっても、私はヘッドペインティングだけです(*‘ω‘ *)


☆これまでのお話
snow-moonsea.hatenablog.jp
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ちなみに、原作のヴィクターくんは19歳の時に命なきものに命を吹き込む技術を編み出しましたが、人造人間の材料に天才の脳みそを壊してしまったので悪人の脳みそを使った…的なことは一切しておりません(╹◡╹)

…でももし本当にその言葉通り命なきものに命を吹き込めるなら、この人形のヴィクターくんにも命を吹き込む事が出来…???


まぁ、まぁ。
何にせよ頭部製作はカスタムドール製作工程の中で一番ワクワクする作業です。
失敗がわかりやすい工程でもありますから、少し詳しく書きますね。

ただし、これは私のやり方です。
色々な人のやり方を見て自分のやりやすい方法を見つけていくのが良いのではないかなーと思います。

ヘッドペインティング手順

自己流の手順なので、正解ってわけではないと思いますが……私のいつもの工程について書いてみます。まぁでも、基本は同じだと思いますよ(*‘ω‘ *)


私が最初に参考にしたサイトはこちら。
カスタムドール材料の専門店の解説です。
www.parabox.jp
アニメ塗り、と言いますがここまで繊細なメイクに仕上がった試しはないなぁ…。
個人の絵柄にもよりますので、完成したものが完成イメージに近ければ細かい事は気にしない(*'▽')

私の目指す完成イメージは「イラストからそのまま飛び出してきたような」です。
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拙宅のヴィクターくんはこんな感じ。


1.ヘッドを洗浄する
2.下書きを書く
 2.5.磨く
3.着色する
4.メイク(化粧)
5.定着スプレーを吹く


1.ヘッドを洗浄する
新品のヘッドはアクリル絵の具を弾いてしまうので洗浄します。
何故はじくかというと製造過程で付着する離型剤が残っているかららしいですが…
まぁ細かい事はさておき、中性洗剤をつけた指の腹でこすって洗えればOKです。中に水が入ってしまうのでよく水を切ったり干したりしましょう。

2.下書きを描く
少し緩めに水で溶いた茶色のアクリル絵の具で下書き。
間違っても赤とか青はダメです。後で後悔します(;´・ω・) <経験者は語る
下書きが描けたら必要な線以外を消しましょう。

3.着色する
アクリル絵の具で着色。
色によってはヘッドにしみこんでしまって消えなくなるので注意。

4.メイク(化粧)
パステルで作ったチークを塗って陰影をつけます。

5.定着スプレーを吹く
メイクをこすると広がってしまったりハゲたりするのでスプレー型のニスみたいなやつで保護します。乾いたら完成。
私はそのあと目に光沢がつく液状のニスを塗ったりしますけれどね(*‘ω‘ *)

道具

これも私が普段使っているものを説明するだけなのでこれがベストいうわけではありませんが(;´・ω・)
いつもはこういうものを道具として使っています(*‘ω‘ *)

アクリル絵の具

メインとなる塗料です。普通の水彩絵の具として使えますが、乾くと耐水性になる絵の具です。使い心地は…うん、普通の水彩絵の具です。

友人オススメのブランド「リキテックス」のものを愛用しています。キャップが白いのとオレンジのがありますが、白い方が粘度が高くて固い、オレンジの方が粘度が低くて柔らかい。
まぁどうせ水で溶きますので好みでいいのでは?
しかし水で溶くと透明度が上がりますから、色の透明度を保ったまま塗りたい時はオレンジの方が発色が良いかもしれません。

アクリル絵の具用メディウム

要するに、アクリル絵の具の透明度を上げる塗料。ジェル状の透明な絵の具です。
水彩をやる時透明度を高くしたい時は水で薄めちゃいますけど、水を加える度に絵の具の粘度が落ちてサラサラになっちゃう。紙と違ってソフビであるカスタムドールは水を吸収しないので水を入れすぎると着色できない。

メディウムを加えると粘度を落とさず透明度を上げる事が出来ます。

メディウムは何通りかありますが、ジェルメディウムが一般的みたいですね。

リキテックス アクリル絵具 リキテックス ジェルメディウム 300ml

リキテックス アクリル絵具 リキテックス ジェルメディウム 300ml

私が使っているのはファレホのメディウムだけれど……お店で「水を加えて薄くすると色がつかない~(;´・ω・)」と相談したら「じゃぁこれを使ってみてください!」オススメされたもの。
後に調べたところ、リターダー系メディウムなので乾燥を遅らせ、グラデーションを作るのに向いているらしいです。(私は普通のメディウムとして使っているけど)

ペーパーパレット

紙製の使い捨てパレット。何十枚か綴りで売られていて、1枚はペラペラのつるっとした手触りの紙。
うーん、イメージとしては解体した牛乳の空き箱をパレット代わりに使う感じでしょうか。

アクリル絵の具は耐水性化するためパレットを洗うのが大変なのであると便利。
だって終わったら丸めてポイすればいいんだもの。

私の愛用しているのはSSサイズ。ポストカードくらいのサイズです。それで十分。

ニス

目のコーティング剤として使っています。
つや出しタイプだと目の部分だけ光の反射が変わるのでつや出しタイプがお気に入り。

私はタミヤカラーのクリア光沢タイプを使っています。
でもそれは最初のカスタムドールの道具を模型屋さんで揃えたからなので、多分普通のニスでも大丈夫。



あまり古い物を使いまわそうとすると、久々に蓋を開けたら粘度が上がってドロドロになってたり黄ばんでたりする事があるので注意。


シンナー系薄め液(模型用溶剤、除光液など)

用途は「消しゴム」です。
注意:シンナーですから必ず換気してくださいね!?
カスタムドールやる時換気が必要な最大の理由…臭いし、頭が痛くなってくる。

これをティッシュや綿棒にしみこませてこすると、アクリル絵の具がするっと落ちる。私が使っているのはラッカー系塗料の薄め溶剤ですが、除光液でも問題ないはず。

Mr.うすめ液 小 50ml T101

Mr.うすめ液 小 50ml T101

この手の溶剤は保管が難しくて、少しでもキャップが緩んでると気化していつの間にか空っぽになっていたりするから怖い&面倒くさい。
でもあまりに強く締め過ぎるとキャップに亀裂が入って気化します(一回やってしまった)

ラッカー系塗料ではないので、それを考えると小さいサイズをちょびちょび使う方がいいと思っています。

面相筆

今回中心に使ったのはボークス製面相筆「茶色02番(ナイロン)」でした。面相筆と一口で言っても材質や太さを考えるとたくさん種類があって、どれが一番いいとも言えない。
ボークス製だと友人にお勧めされたのは茶色の04番。
面相筆・ペン | 造形村工具カタログ | 株式会社ボークス

今まで使った事のあるもので比較的安価なものだとタミヤモデリングブラシも使いやすかったような。

タミヤ メイクアップ材シリーズ No.48 モデリングブラシ HF 面相筆 極細 87048

タミヤ メイクアップ材シリーズ No.48 モデリングブラシ HF 面相筆 極細 87048

ノンオイルパステ

ドール用チークとして使います。
顔に陰影をつけたり、頬を少しピンクに染める為に使います。

まぁ他にも使い道が色々あるようですが、私は主にそれにしか使わないですね。

サンドペーパー(紙やすり)

ノンオイルパステルをこすって粉にし、チークとしてつかうためにつかう。

化粧用ブラシ

チークをはたくにはブラシがなくちゃ。
ちなみに私は100円均一ショップでトラベル用の小さいものを買いました。

定着スプレー(トップコート

パステルでつけたチークが取れないようにするためのスプレー。
室内でやると色々面倒なので(スプレーなので吸い込むのは毒。換気が必要。また、スプレーなので飛び散って部屋を汚します。

私はいつもヘッドを竹串の尖っていないほうに引っ掛けて持ち、ベランダでシュッシュしたらそのまま鉛筆立てに立てて乾かしています。

ちなみに私はボークス製のドールメイク用パステル定着材スプレーを使っていますが、これでもいいはず。

GSIクレオス Mr.トップコート 水性 つや消し スプレー 88ml ホビー用仕上材 B503

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綿棒(極細タイプ 模型用/普通サイズ 化粧用)

私はいつも計3種類の綿棒を使います。
模型用の極細タイプの綿棒は2種類セットで売られていて、先が尖っているのと尖っていないものがあります。
普通の綿棒は100円均一ショップで購入しますが、片方は普通で片方は先が尖っている化粧用の綿棒が便利。

シンナーを染み込ませて消しゴムとして使います。シンナーは気化する為、染み込ませておいてキープはできない。

比較的広い範囲を綺麗にするのに普通サイズの綿棒は欠かせないし、目の周辺の細かい部分を綺麗にするのに極細サイズも欠かせません。
小さいんだから極細タイプだけでいいじゃん?と当初は思っていたけど、極細タイプはシンナーの吸収量が少ないのですぐに消しゴム効果を失い、逆に周囲を汚してしまいます。

綺麗な綿棒でないと綿棒に付着した絵の具がついて汚れるので綿棒は適度に綺麗なものに交換します。故に複数本必要。

その他必要な装備

水とティッシュペーパー、それから竹串。ビニール袋。
水はアクリル絵の具を溶くのに必要ですから一目瞭然。ティッシュは塗装の時にないと困る。

竹串は塗装の時はパレットの上で混色させる攪拌棒の代わりに。
尖っていないほうを上にして鉛筆立てに立てると、色を塗りたてのヘッドを乾かしておくためのヘッドホルダーになる。

なお、塗装の時に出たゴミ(使った綿棒など)をそのままゴミ箱に入れるとシンナーの香りが臭い的にも毒性的にも大変ヤバいので、必ず別のビニール袋に入れて口をしっかり締め、部屋の外に出しておくことをお勧めします。

今回の作業経過

せっかくなので今回ヴィクターくんの製作過程を写真に撮ってみました。
一応、設計図はこちら。表情は左の一番大きい画像の顔を参考にしようと思います。
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ヘッドの洗浄を終えたところからスタート。

下書きを描く

まずは下書きならぬラフを描きます。眉、目、口の位置を決める作業です。
水で緩く溶いた茶色の絵の具を面相筆をつかってちょいちょいと。余計な水分が多すぎると広がってしまうので、筆の根元の部分で軽くティッシュに触れ、余分な水分を飛ばします。

まずは初手。まぁ初手はあまり緊張せずにささーっと描きましょう。

………。
不細工…( ゚Д゚)!!

その瞬間―そのとんでもない大失敗を目の当たりにした瞬間、こみあげてきた感情をどう言い表したものか……。これまで、文字どおり苦しみもがきながら、苦労に苦労を重ねてきた結果、こうして生まれたこのおぞましい生き物を、どう説明したものか……。わたしとしては、四肢は均整が取れた状態に、容貌も美しく造ってきたつもりです。そう、美しくです!その結果が――なんと、これか?

メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P109~110

いやいや!!そこまで絶望してないから!!!
まだ初手なんで。ここからじわじわとバランスを整えていきます。

ラッカー薄め液で修正

広い面積を消す場合はティッシュに、そこそこ細かい部分を消す時は普通の綿棒に、滅茶苦茶細かい部分を消す時は極細綿棒にラッカー薄め液をしみこませて拭きます。
極細綿棒、細かい部分を拭き取るのには良いのですが、表面積が狭い分吸い込む薄め液の量も少ないのでなかなか思うように消えない事も多いです。なので極細綿棒が活躍するのは下書きを完了させる前と着色時の微調整の時でしょうか。

一度汚れた部分で繰り返し拭くと汚れが広がるのである程度で新しい綿棒に交換する事をお勧めします。特に、綺麗に磨く必要があるシーンでは新しい綿棒を使います(*‘ω‘ *)


結構綺麗に消えますでしょう?(^.^)
でも、アクリル絵の具の色によってはソフビにしみこんでしまって綺麗に消すことが出来ないです。
何度も修正が必要な下書き段階は薄めの茶色のみを使うのがよさそう。

ラフ完成→下書き完成

直しながら横顔も確認します。
ドールは立体物ですから、正面だけでなく横顔も重要なのです。

目の位置や口の位置を決定するラフはこんな感じになりました。

シンナーを染み込ませた綿棒を駆使して徐々にラフを細くし、決定した線を書き足し…下書き完成に向けて調整を繰り返します。
消しては加筆、消しては加筆。

清書の時に消したりするのが困難になるのでなるべく細く。

下書きはこんな感じで仕上げました。

オープンマウス(口を開けた表情)を予定していましたが、うつむいた表情にしたい時に邪魔になりそうな気がしたのでやや無表情気味です。

でも無表情の方が顔の角度で表情を変える事ができるから良いかなと思います。ヴィクターくん、あまりテンション高い性格じゃないし…。

顔の色ぬり

薄い色→濃い色で色を塗っていきます。
色付けにあたっては水彩っぽく塗る方も居てその雰囲気もとても好きなのですが、試行錯誤の末、私にそれは難しかったので、アニメ塗り風に塗ります。

私はベタ塗りっぽく塗ってしまうので、塗った時の線がガビガビにならない程度に水少なめで溶いたアクリル絵の具で下書きを隠しながら塗っていきます。
シンナーを染み込ませた綿棒でちまちまと下書きを消しつつ作業を繰り返します。

拙宅のヴィクターくんはコミュ障を強調する為に頬を心細そうに赤らめているので今回は頬紅として赤に少し茶色を混ぜて溶いた色で斜線を書きました。
斜線は肌の色を透かしたかったのでメディウムと水で透明度をあげています。

……しかし赤が本体に染み込んでしまって、失敗した線がぼやーっと本体に残ってしまいました。まぁでもこれは頬紅だと思えばそれはそれでいいかもしれない。

口元は茶色に少しだけ赤を入れた赤茶色で塗ることにしました。


こんな感じに仕上がりました。


……うーん、目は青紫色にしたかったのだけれど濃い藍色という感じの色になってしまいました。
まぁこの後、シンナーで目の色の部分だけ色を抜いて青紫で塗り直しましたが、あんまり大きくは変わってないです。完全に自己満足です。

一旦しっかり乾かします。

メイク〜保護塗料の塗布

頬紅をさしたり、陰影をつけたりする為の作業です…が、今回のヴィクターくん、頬紅は頬の斜線の失敗時にしっかりついてしまったし、彼のキャラクター性は「コミュ障なので友達もロクに作れず、研究室に引きこもってガリガリに痩せてしまったもやし」なので肌は白く、不健康そうな感じでいいと思うのでメイクは飛ばすことにしました。

手順としては、パステルで作ったチークで化粧をさせるなどがあります。
一応書いておきましょう。

メイク

紙の上で、パステルをサンドペーパーで擦ります。私はいつも擦る前に紙を四つ折りにして、擦り終わった後紙を折り目に向かって傾け、中央に寄せます。
折り目をつけないと擦ったパステルを寄せるのが面倒なので。

100円均一ショップで買った人間用のチーク用ブラシやアイシャドウ用チップなどで陰影をつけていきます。

保護塗料の塗布

パステルメイクを施した場合は定着スプレーを吹きます。使い方はスプレー本体に書かれていますが、シューっではなく、シュッシュという感じ。

これを乾かしてひとまず完成、といったところ。

私はその上からいつも目の部分にニスを塗ります。
トップコートを吹くとマットな仕上がりになるのですが、その上に光沢のついたニスを塗ると目だけが光を少し反射するので。

ちなみに、首の穴に十字に切り込みを入れておくとボディを交換する時などが楽になります。

ヘッドペインティング終了

うーん、結構順調に進んだと思っていたけれど、写真を撮った時間で所要時間を確認したら【2~3時間】はかかっている……。
不慣れだともっとかかると思います。

シンナー臭いし、もう勘弁。
…と思うけれど、やめられないのですよねぇこれが。それは完成品を手のひらに乗せた時に思う事なのですけれど。


ちなみに、顔のバランスを整える時に参考にしたのは、以前作ったドールさんでした。

彼は映画『蠅男の恐怖』の主人公アンドレ・ドランブルです。頬紅はパステルで塗られています。
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DVDと並べてもこのサイズです。
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ブロマイドと一緒に。蠅男シリーズにはかなりハマって、主要キャラのほとんどをドール化するという狂った事をしたことがありますが……
でもそれがあったから今こうしてヴィクター・フランケンシュタインを作っているような気がする。

蝿男の恐怖 [DVD]

蝿男の恐怖 [DVD]


さて、次は髪の毛の準備のお話。
この記事を書いている今はもう既に一応完成と言う状態になっていて、「ベストをまた失敗しているから直すか迷う…見た目は特に問題ないし…」とかんがえているくらい。

やはり三次元召喚は良い……
ではまた次回。

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