海に浮かぶ月のはしっこ

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【ドール/読書】人造人間を作ったマッドサイエンティストとして知られるヴィクター・フランケンシュタインを作る…が、ヴィクター・フランケンシュタイン、私は君に物申したい。

気に入った作品がドマイナー作品や古典作品で公式からグッズが出ない時、どうします?
私は「作る」に走ります(`・ω・´)+

さぁでは私の現在のマイブーム。
今年で200周年を迎えた文学作品、メアリー・シェリー著の「フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス」(1818年)のグッズを作りましょう。

しかしそれにあたって、ヴィクターくん。
私は君に物申したいことがある。

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序文

今回私が作ろうと思って準備しているのは、推しキャラクターである主人公のヴィクター・フランケンシュタインくんの手のひらサイズのドールさんです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
まぁ具体的なデザイン設定とかアトリビュート(象徴・シンボル)がないので好みの容姿で作るんですけれど。

まさか、架空の人物ではあるものの、人造人間を作ったマッドサイエンティストとして知られるヴィクター・フランケンシュタインを作る事になるとは……いや、思ってたけど。
公式が出してくれないなら自分で作って愛でる、というのはもう幾度となく繰り返してきた事ですから。

それというのも、カスタムドールを嗜むようになってから、キャラクターデザインを考える時に「●●社のウイッグの色…」「××社のウイッグをドール用ワックスで…」「服の構造がこれでは縫い上げた時にバランスが…」などと、ドール化する事を前提にしてキャラクターデザインを考えるようになってしまったのです(;´・ω・)

しかし、ヴィクター・フランケンシュタインくん。
私は君に物申したい。

一応いつものやっときますか…「ヴィクター・フランケンシュタインとは」

一応いつものやつやっておきましょう…

「"フランケンシュタイン"は!人造人間を作った主人公ヴィクター・フランケンシュタインのファミリーネームで!人造人間の名前じゃないんで!
あとヴィクターくんは大学生なので博士号とか持ってないんで!それから人造人間はめちゃくちゃ賢いし肌の色は青とか緑じゃないしボルトとか刺さってないので、宜しくお願いします!!( ゚Д゚)」

ついでに言うと、ヴィクターくんは所謂ヘタレ男子である。留学するまでスイスの湖近くにあるジュネーヴのお屋敷で、のほほんと生きてきたお坊ちゃんである。
作中、研究に熱中しすぎて「ガリガリに痩せてしまった」と言っているので、多分もやしである。

計算が正しければ人造人間を作った時は21歳である。
天才過ぎる。やばい。

その上、コミュ障で、少年時代は錬金術に傾倒し本気で賢者の石を作ろうとしていた。

それなりにキャラは立っていると思う。主人公なんで。
根は卑屈なくせに調子に乗って傲慢になった瞬間に毎回鼻を折られる。可愛い(*‘ω‘ *)v

ヴィクター・フランケンシュタインと人造人間

ヴィクターくんが人造人間作りに興味を持った理由ははっきりしていないけれど、恐らくは錬金術の延長で、不老不死や人体錬成に興味があった事、大学進学直前に母親が亡くなっている事などが動機になっていると思います。

少年時代に錬金術に傾倒したものの、科学と出会った事で卑屈になって投げ出したとしていますが、後に大学でそんな少年時代を教授に肯定された事が彼の頭角を現すきっかけになりました。いや、天才過ぎるけどね?

そういうわけで、「錬金術なんて、あんなもの(時代遅れで恥ずかしい)」と吐き捨てているものの、彼のアイデンティティの一部だったのではと思っています。


そんな天才大学生ヴィクター・フランケンシュタインくんは19歳の頃に命なきものに命を吹き込む術を手に入れ(チート過ぎる…)、21歳の時に人造人間を完成させたけど、いざ動き出した人造人間を見たら造形がキモ過ぎた…

その瞬間―そのとんでもない大失敗を目の当たりにした瞬間、こみあげてきた感情をどう言い表したものか……。これまで、文字どおり苦しみもがきながら、苦労に苦労を重ねてきた結果、こうして生まれたこのおぞましい生き物を、どう説明したものか……。わたしとしては、四肢は均整が取れた状態に、容貌も美しく造ってきたつもりです。そう、美しくです!その結果が――なんと、これか?

メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P109~110

……ので怖くなって逃走し、挙句の果てにベッドに逃げ込んで震えていました。

息もつけないほどの恐怖と嫌悪感が、わが胸を満たすのです。自分が創りだしたものの姿に耐えられず、わたしは部屋から飛び出し、寝室に駆け込みました。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P110

(悪夢の末に)目が覚めて研究室に戻ると人造人間はいなくなっていて、安心したのもあってそのまま気絶した上に病気になる。

そして人造人間を作った事さえ忘れようとしていた2年後のある日、人造人間が「お前はおれを幸せにする義務がある」と言って現れる…という筋書き。


まぁビビッて逃げ出したにしても、結果的にはキモい造形に作ってしまった人造人間を捨ててしまった事にはなるのだろうか、ヴィクターくん。

しかし、ヴィクター・フランケンシュタインくん。
私は君に物申したい。

ドールの作り方について

元々私がカスタムドールづくりに手を出したのは友人たちが推しキャラのフィギュアを買っているのが羨ましかったからです。

私が「ドール作る!」って言いだしたら、今は選択肢は「オビツ11」一択なんですが、これに至るまで様々な失敗を繰り返してきました…。

だからヴィクター・フランケンシュタインくん。
私は君に物申したい。

オビツ11に辿り着くまで

最初は紙粘土で身長3cmほどのマスコットを作る所から始まりました。造形が難しくて、歪な出来でした。

※先日掃除中に出てきた
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フィギュアに振り切れるなら、既製品の改造という手もあります。既製品を直接削り盛りしたり、シリコンで型を作り、レジンを流し込んでパーツを複製したりね。
(※勿論個人利用の範囲内で、ですよ!)

いちからねんどやエポキシパテで造形する方法も試したけど、滅茶苦茶難しかった…(当たり前)


他に試したやり方だと、ぬいぐるみドールですね。
これは1回目でそれなりの出来になって嬉しかった記憶があります。

自分で一から作る方法は試していませんが、球体関節人形とか。レジンキャスト製の球体関節人形も何体か持っています。大きいし重たいので着替えさせるのも一苦労で、就職してからはなかなか触る機会が減ってしまいました。

その他、27cm級カスタムドールも試してみたけど、顔立ちがリアルになりがちなのでなかなか好みのバランスにならなくて。


最終的に、オビツ11という3~4頭身(幼児体型ともいう)の、手のひらサイズのカスタムドールにいきついたのでした。
27cm級のカスタムドールと同じ時期に手を出しましたが、これが一番私の性に合っていた、とそれだけの事です。

勿論、私のカスタムドールの腕前なんてたかが知れているのですが完成したドールを写真に撮るのは楽しくて。
調子に乗って作り過ぎている気がします。

散乱する材料たち

オビツ11で作る事が決まっても、材料の選択肢は多岐にわたります。オビツ11も色が3種類ほどありますしね。

まず、ヘッドをどれにするのか。
大まかに言って、目の扱いだけでも直接顔を描く「ペイントヘッド」、アイホールが開いていて、内側から眼球を嵌める「入れ目ヘッド」。
あと、既に人工毛が植えられている「植毛ヘッド」にするのか「自分で植える」か「ウイッグを使う」という選択肢もある。

ペイントヘッドにしても自分で絵の具等を使って描くのか、最初から描かれているヘッドを選ぶのか、デカールと呼ばれるシールを貼るのか…。
入れ目ヘッドにしても、アイホールは自分で開けるのか、最初から開けられているものを選ぶにしてもどのデザインを選ぶのか、眼球の素材はガラスかアクリルかレジンか…
人工毛にアレンジを加える方法として、お湯パーマにするか、ヘアアイロンにするか、ドール用ヘアワックスにするかetc......

…という風に選択肢が広いし、自分のイメージに近いもの、自分のやりやすい方法を選ぶために組み合わせを考える事も必要になってきます。
カスタムドールを始めて5年以上は経つけれど、(そこまで真剣にやっているわけではないというのもありますが)未だに悩んでしまうことも多くて悩ましい。


今回の組み合わせはスタンダードに
オビツ11(ホワイティ)
・ペイントヘッド(自分で描く/アクリル絵の具+つや出しクリア)
・ウイッグ(耐熱系黒ウイッグ+ハサミで加工+ドール用ワックス)
・服(自分で作る。。。)


さて、前回までの材料の余りとかないかな~と思って材料入ってそうな箱開けたら…

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本当いっぱい…いっぱい材料ある……!
(材料というより加工に失敗した残骸に近いものも入っている)

勿論これらがヴィクターくんを作るのに適合するわけじゃないのですが…未加工のショートカットウイッグで使えそうなものが見つかったのでこれを加工する方向で行こうと思います。

しかし…ははは、すごいな…(苦笑

これからヴィクターくんを作るにあたって、失敗する可能性は低いというか、それなりのものはできると思っているけれど…。
この確信に辿り着くまで、一体どのくらいのお金と時間をつぎ込んだのだろう……いや、考えちゃだめだ(;´・ω・)
考えちゃダメ。


ヴィクター・フランケンシュタイン、私は君に物申したい

いいかい、ヴィクター・フランケンシュタイン

私はね、ぬいぐるみやフィギュアにも挑戦した挙句にたどり着いた、こんな手のひらに収まってしまうような小さなお人形を作るまでに本当にお金と時間と多大な失敗を繰り返し、ようやく君を作るんだよ。

ぬいぐるみ、紙粘土、球体関節人形、フィギュア…その他羊毛フェルトもやってみた。

まぁ…その、なんだ。


一発で完璧な造形が出来る奴なんていねぇよ!!( ゚Д゚)

たとえ趣味だとしても下積みがあるって事だ。

snow-moonsea.hatenablog.jp

ドールづくりは人造人間制作に似ているかも

何年もかけて色々試して、私の技術による出来栄えと作業コストと予算のバランスの良いのがオビツ11を使用したカスタムドールという結論に至っているのだけれど…。

しかし、もし手作り球体関節人形という方法を選んだなら、ヴィクターくんの息子さんを生み出す過程を疑似体験できたのかもしれない。作り方は調べたので何となくわかっているけれど、問題は顔の造形でしょう。

アクリル絵の具で顔を描くだけでも、左右対称にするのは難しい。それを粘土で一から造形するなんて……「幾つ失敗する事になるのか」、と思うとなかなか手が出せない。(元々「フィギュアが欲しい」という動機だったので球体関節人形は趣向が違う、という事に後々気が付く)

そして、最初の一回目はもれなく私がヴィクターくんの心境になる事でしょう。


それはきっとこんな感じ。

作り始める前

「よーし、材料も集めたし、可愛いヴィクターくん(※人形)を作るぞー!初めてだけどきっと何とかなる!皆それなりに可愛く作っているし!」

※その皆は、完成品がそれなりに良くできたからネットにアップしているのでは?

造形中

「うん…?なんか思ったように出来ないな?」→「いやいや乾いたら割と可愛いかもしれない。材料の再利用なんて出来ないし」→「な、なんか顔が歪んでいる気がする…いや気のせいだ、髪の毛を付けたらきっと可愛いに違いない」

完成直前

「あ…あれ…なんか違う…思ったのと違う…」→「いやでもせっかくここまで作ったし、とりあえず完成させてみよう。ここから作り直しなんて最初から材料集めなおさなくちゃいけないし」

※この辺りで削り盛りして理想の造形に近づけていけばいいのだけれど、私の場合一回目は早く完成させたい気持ちが急いてしまう事も多い。

完成

「可愛くない!ヴィクターくんはもっと可愛いはず!」→「こんなはずじゃなかったのに!私的にはもっと可愛いものを作るはずだったのに!頑張って左右対称に仕様としていたのに!その結果が、これか!?」

その瞬間―そのとんでもない大失敗を目の当たりにした瞬間、こみあげてきた感情をどう言い表したものか……。これまで、文字どおり苦しみもがきながら、苦労に苦労を重ねてきた結果、こうして生まれたこのおぞましい生き物を、どう説明したものか……。わたしとしては、四肢は均整が取れた状態に、容貌も美しく造ってきたつもりです。そう、美しくです!その結果が――なんと、これか?

メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P109~110

その後

「材料と時間を無駄にしてしまった…これ(失敗作)どうしよう…キモい……可愛くない…」→「でもせっかく作ったのに捨てるのも忍びない…(箱に詰める)」→「よし、見なかったことにしよう。うん、何もなかった!何もなかったぞ!(寝る)」

息もつけないほどの恐怖と嫌悪感が、わが胸を満たすのです。自分が創りだしたものの姿に耐えられず、わたしは部屋から飛び出し、寝室に駆け込みました。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P110

そして1~2年後の大掃除の時とかに出てきて「ギャッ( ゚Д゚)」と言う。

要するに、色々言うけど私もヴィクターくんと同類でした。

…というわけで、シミュレーション結果、私もヴィクターくんと同じことをしました。お人形だけど。

でもね、ヴィクターくん、人造人間は生き物なのでお人形じゃないんだよ…(;´・ω・)
2年後に実家に帰ってみたらポロっと出てきて「ギャッ」って言うのもまぁ仕方のないことかもしれないけど、彼は生き物だから!
一応息子さんだから、ね!?(;´・ω・)


けれど、私も最初の一回でステキなお人形が作れるんだと思ってカスタムドールに手を出したし、アクセサリー作りだってそうです。でも最初はやっぱり思い通りにはいかない。はじめて作ったカスタムドールはアクリル絵の具で顔を描いたら残念な顔立ちになり、お湯パーマに失敗して髪はぐちゃぐちゃ。「でも最初に作ったものだから」と思って可愛いと思い込もうとしたけど、引き出しにしまいっぱなしになっていて、結局数年後の大掃除の日に捨ててしまいました。
いきなり27~30cm級のカスタムドールにしては値段高めのボディとヘッドに手を出したので材料費が惜しかったけど、まぁ仕方がありません。

せっかく揃えた道具が勿体なくて続けて今に至ります。カスタムドール作りもアクセサリー作りも今ようやく「それなり」になってきたところ。
私はアラサーですがようやく「まぁ一度で成功する確率なんてそんなに高いものじゃないよねぇ」と納得できる年齢になったという感じでしょうか。


何事も失敗を繰り返して上手くなっていくしかないのですね。きっとヴィクターくんは若くて経験が足りなかったうえ、天才ゆえに自分の失敗で挫ける事が少なかったのでしょう。作り始めたの19歳だし。
若いから仕方ない。仕方ないね(-ω-* )

でもまぁ、やっぱり、ペットにしても人造人間にしても、生き物は最後まで責任持とうね、ヴィクター・フランケンシュタインくん!!