海に浮かぶ月のはしっこ

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【雑記/読書】自分だと疑われなければ誰でも凶悪になれるかもしれない…?

今週のお題は「ハロウィン」…とはいえ直接関係のある話ではないけれど。
会社で先日の渋谷でのハロウィン暴動の話題が出たのをきっかけに考えてみた事。…というわけで、今回はジキルおじさんとグリフィンの話をします。

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…ろくな連中じゃないな(;^^)

2018年渋谷のハロウィン暴動について検索してみると悪ノリした参加者が大暴れしたというニュースを読むことができます。
www3.nhk.or.jp
読んでみると、凄い、凄い。
参加者たちがトラックをひっくり返したという話がハイライトで出てくるけれど、それ以外にも飲食店の券売機を破壊したり、お店の陳列棚を破壊したとか、スリや盗撮、痴漢、暴行などがあり、逮捕者も出たと聞きます。
モラルが破綻し過ぎて世も末ですね(;´・_・)

集団心理が原因、と分析する記事をちらほら見かけますし、会社で話題に上った時も「集団心理」という言葉が出てきました。
私はそれを受けて「しかも皆ハロウィンで仮装していて「自分じゃない誰か」になっている事も責任感や罪の意識を自覚しにくくなっているのかも」と答えたのですが………。


いや、それ、まさにジキルおじさんじゃん( ゚Д゚)
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……と思ったので、少し考察しようかなという気になったのでした。
最も、ジキルおじさん以外にもグリフィンもそれに当てはまるキャラクターなので一緒に言及してみようかと思いますが。


まず、ジキルおじさんの事についておさらいします。
1886年のスティーブンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」の主人公(?)のこと。
snow-moonsea.hatenablog.jp
ジキルとハイド (新潮文庫)

…ではありますが、現在の彼のイメージと原作のイメージはかなり違うと思うのですが、はて、現在のイメージってどういう感じなのだろう。

私が勝手に1mmも知らないで勝手に想像していたあらすじを言ってみると「主人公が寝ている間に別の凶悪な別人格に体を乗っ取られて殺人を繰り返し、それに気づいた主人公が悩み苦しみ絶望するサスペンス」だと思っていたのですけど………皆さんはどうですか?

でも原作はそういう話ではなくて……
一言で説明すると…うーん、「親友のジキル博士が悪人に脅迫されて言いなりになってるんだと思ってたら、ジキル博士が別人に変身出来る薬を飲んで夜な夜な大暴れしてただけだった」みたいな……(かなり端折っているけれど)
真相を明かす最終章"ヘンリー・ジキルの語る事件の全容"はジキルおじさんが本文の主導権を握っていますが、「(ハイドの姿で行ったことについて)自分がやったとは認めていない」と言いながらも、全くの別人格と捉えると幾つもの矛盾点が生じる…、という”信頼できない語り部”であったりする。
ちなみに、ハイド氏を「薬(ドラッグ)で暴走しちゃったジキルおじさんご本人」と考えるとすんなり矛盾点は解消されるので、多分ジキルおじさんは自分が語り部になった事で「自分は何も悪くない!」と言ってるだけのように見えます(;´・ω・)

"ヘンリー・ジキルの語る事件の全容"は彼の言い分を全部信頼して受け取っていいのか、彼は自分を擁護しているという前提を念頭に置いて読むべきなのか未だに迷っているのですけど…私は後者よりです。
snow-moonsea.hatenablog.jp


そしてもう一人。グリフィン。
H・G・ウェルズの「透明人間」の主人公。
snow-moonsea.hatenablog.jp
透明人間 (岩波文庫)

彼の方が説明は簡単です。
グリフィンは元々粗暴な性格ではありましたが、透明になった彼は「透明なら何をした所で誰にもバレない」と思い、行動は徐々にエスカレート。やがて街を恐怖に陥れました。


二人は仮装よりももっと高度な変身をしているけれど、変身した事で「今の自分は自分ではない」「誰にもバレない」と気が大きくなり、行動をエスカレートさせてしまいました。

集団心理で気が大きくなるのも、「自分個人ではなく今の自分は集団の中の一人でしかない」っていう感覚はあると思うのです。群れで行動すれば自分個人を特定されるリスクが下がるし。

そしてハロウィンで仮装している。
仮装……自分が自分ではない何者かに変装している状態。演劇をやっている友人から「仮面を被ると別人のように行動出来る事もある」と聞きますが、一枚の仮面を隔てる事で自分個人という感覚が薄らぐのかもしれません。


グリフィンは透明人間になってからはずっと透明のままですし、いちいち反省をしませんが…。ジキルおじさんは昼間の生活は普段の自分として生活しています。
ジキルおじさんは物語の進行役であるガブリエル・ジョン・アタスンにエドワード・ハイドとの関係を怪しまれますが、その度に焦って隠そうと誤魔化す台詞を言います。
変身する薬を作った元々の根本的な動機に「(本来は快楽主義者なのだけど)欲望のまま振舞って自分の評判を落とすのは嫌」というのがあるようなので、彼は欲望のまま振る舞うためにエドワード・ハイドと名付けた着ぐるみを着ずにはいられなかった。

個人を特定されれば責任を問われるし、自分の評判も下がってしまいますからね。
夜暴れ回る為に着ぐるみが必要だった。
その着ぐるみを自分ではないと言い訳する為だけに郊外に家を買ったりエドワード・ハイド名義の銀行口座を作った。
そして行動は徐々にエスカレートしていき、本編中最大の事件を迎える。


自分個人が疑われなければ何でもできる……そういった人間の本質は130年前から何も変わっていないのかも。

とは言いますけどね、やっぱり暴れるのは良くないですし、ジキルおじさんはクズだと思います (`・ω・´)+
…と言いながらも、作品は好きなんですけどね。

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それにしても今日は本当に絵の描けない日だった…