まぁ今日はハロウィンですし、今週のお題「ハロウィン」だったので、先日のラディコシアター主催の「ピクニックシアター」に参加した際に発表した自由研究「ハロウィンの仮装で伝統的なモンスターと認識されているイメージが別に歴史が古くなさそうな件について」の内容を掲載してみようかなと思います。
はじめに
さて、今年もハロウィンシーズンになりました。
2018年10月……。
私が小説「フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス」にハマって最初のハロウィンシーズンを迎えようとしています。
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町でもちらほらハロウィンの衣装が売られているのを目にしますし、アマゾンや楽天でも衣装が売られていますよね。
でもスパイダーマンとかミニオンとか…そういったアニメや映画のキャラクターの衣装も混ざっていて「なんかただの仮装パーティみたい!」と言っちゃう人も稀にいますよね。
ちなみに、以前私もその中の一人だった事をここに告白しておきます。
私は思っていたのです、「もっとこう、伝統的なモンスターの恰好をすべきじゃないのか、きっと宗教行事なのでしょうし」と。
しかし、今日はそんな私が「ハロウィンの仮装で伝統的なモンスターとされているイメージが別に歴史古くなさそうだと思った件について」お話します。
始まりは手芸屋さんのハロウィンコーナーだった
これは私が手芸屋さんに行った時の事。
町はすっかりハロウィンムードになっていて、小物や装飾がオレンジや紫になっていました。
ハロウィン系のマスコットの手作りキットが売られていたのですが、大体こんな感じでした。
今年のラインナップは、かぼちゃ、ドラキュラ、ミイラ男、おおかみ男、フランケン、黒猫、魔女、ですね。
私「いやおい、ちょっと待て!!!なんか違くないか!??!!伝統的な、って一体どういう定義なんだ!!」
……というように、毎年全く気に留めていなかった事に今年はツッコミを入れてしまったので、ちゃんとそれを受け止めて考察しよう。
それが今回のプレゼンのテーマです。
伝統的な(?)ハロウィンのモンスターについて調べてみた
かぼちゃのおばけ
通称「ジャック・オ・ランタン」。
アイルランドおよびスコットランドに伝わる鬼火のような存在。ジャック・オ・ランタンとは“ランタン持ちの男”という意味。
現在のイメージの元ネタは「ウィルオウィスプ(松明持ちのウィリアム)」の説話。ウィリアムは悪行の限りを尽くして死んだ後、地獄に落とされそうになった。しかし、彼は聖ペテロを言いくるめて生き返る。
(ギリシャ神話にも似たような奴いなかったっけ…シシュポスっていうんですけど)
しかし再び死んだ時、地獄にも天国にも行くことを許されず、悪魔にすら哀れまれ、炭火をもらった。以来、カブで作ったランタンを手に地上を彷徨っているという。
ちなみに、今かぼちゃになったのはアメリカにカブがあんまりなかったかららしい。
☆参考
ジャックランタンとは|ハロウィンを楽しむ(ハロウィーンの意味)ハロウィン祭りで日本でも仮装、衣装を楽しむ
ジャック・オー・ランタン - Wikipedia
ウィルオウィスプ - Wikipedia
黒猫
西洋では昔から不吉なものとして扱われ、魔女の使い魔としてイメージづけられている。
どれくらいそのイメージが根強いかというと、19世紀のベルギーでは水曜日に黒猫を虐殺する習慣があったほどだそうで、2007年のロイターの記事には「イタリアの動物愛護団体AIDAAによると、同国内では昨年1年間に推定6万匹の黒猫が殺害されたという。」とあるほど。
迷信って怖い。
魔女(魔法使い)
神話の時代から伝承が存在している妖術を使う人間。
15~17世紀には魔女狩りが行われ、魔女と疑われた多くの一般市民が処刑された。
それは悪魔と通じているという迷信からのことで、そういう意味では黒猫の件と大差はない。
ひどい。
ドラキュラ伯爵
ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』(1897年)に登場する男性の吸血鬼。ということは、そもそも"ドラキュラ"とは作品名であり、小説の登場人物の個人名である。通称とかではない。
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吸血鬼伝承は古くからヨーロッパ各地にあり、またフィクション作品としても ポリドリの『ヴァンパイア』
(1819年)などがあるが、設定の多くはジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)の
影響を多く受けている。
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カーミラも登場する女吸血鬼の名前であり、個人名だが、『カーミラ』よりドラキュラの名が有名になったのは映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)とユニバーサルの映画『魔人ドラキュラ』(1931年)の影響のようだ。(吸血鬼ノスフェラトゥは原作がブラム・ストーカーの『ドラキュラ』)
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そしてこれが『魔人ドラキュラ』のポスターです。
出典:
魔人ドラキュラ - Wikipedia
このオールバックで、タキシード風のコスチュームに裾がギザギザのマント…見た目のフォルムが「あっドラキュラね」って感じの、これ。
『魔人ドラキュラ』が原点になっているみたいです。
☆参考
ドラキュラ - Wikipedia
吸血鬼や狼男はなぜ生まれた? 伝説誕生の経緯を検証|ナショジオ|NIKKEI STYLE
※映画の方
吸血鬼ノスフェラトゥ : 作品情報 - 映画.com
魔人ドラキュラ | 映画-Movie Walker
吸血鬼ノスフェラトゥ - Wikipedia
魔人ドラキュラ - Wikipedia
狼男
西洋の伝説として存在し、神話の時代から人間から狼に変わる物語は存在している。
ちなみに「銀で出来たもので殺せる」等はユニバーサルの映画『倫敦の人狼』(1935年)のオリジナル設定らしい。
なお、その後ユニバーサルの映画『狼男』(1941年)のヒットによって様々なオリジナル設定が狼男の伝統的な設定であるという誤った認識が広mユニバーサルぅぅうう!!(>△< ;)
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そしてこちらが『狼男』(1941年)のポスターである。
出典:The Wolf Man (1941 film) - Wikipedia
カップルが座っていて、満月を見た男が急に苦しみ出して毛むくじゃらになっちゃう、あれ。
私も元々の映画をきちんと見てないのに「あぁあれね」と思ってしまうほど、色々なパロディで使われ過ぎている1941年の「狼男」。
もう、こんな風に思ってしまう時点で私も浸食されています…(;一ω一)
☆参考
吸血鬼や狼男はなぜ生まれた? 伝説誕生の経緯を検証|ナショジオ|NIKKEI STYLE
狼男(オオカミオトコ)とは - コトバンク
※映画の方
倫敦の人狼 - Wikipedia
倫敦の人狼 | 映画-Movie Walker
フランケン
フランケンっていう略され方を多く見かけるけど正確には「フランケンシュタインの怪物」。
フランケンシュタインは主人公の名前であり、怪物(人造人間)の名前ではないし、怪物に名前はない。
本来はメアリー・シェリー『フランケンシュタイン:或いは現代のプロメテウス』(1818年)に登場する人造人間。
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なお、主人公のヴィクター・フランケンシュタインは大学生である。博士ではない。博士号などない。
「フランケンシュタインの怪物」の見た目の設定は肌は別に青くないし、継ぎはぎだらけでもないし、風車小屋も燃えないんだけど、ついつい風車小屋が燃えると思ってしまうのはユニバーサルスタジオ製作『フランケンシュタイン』(1931年)のせいだ!
※これは観たので断言できる
継ぎはぎだらけで頭にボルトとか刺さってて純粋で知能が低くて、喋れない。身体こそ大きいですが、まだきちんと教育を受けていない幼子のような感じです。
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そして、こちらが映画『フランケンシュタイン』(1931年)のポスター。見た目も現在のイメージだとまさにこれ、って感じです。
出典:フランケンシュタイン (1931年の映画) - Wikipedia
ちなみに原作で怪物の事はどう書かれているかと言うと、
その黄身がかった皮膚では、皮膚のしたにある筋肉や動脈のうごめきをほとんど隠すことができません。確かに、髪は黒くつややかに伸び、歯は真珠のように真っ白ですが、そんな麗しさも、潤んだ薄茶色の眼をいっそうおぞましく際立たせるばかりです。その眼が嵌め込まれた眼窩も同じような薄茶色、顔色もしなびたようにくすみ、真一文字に引き結ばれた唇は血色が悪く、黒みがかっているようにさえ見えます。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」 芹澤恵(訳)、新潮社(2014)、P109~110
と書いてあって、継ぎはぎだらけとも書いてないし、ボルトとかも刺さってないです。滅茶苦茶喋るし、滅茶苦茶賢い、孤独で可哀想な復讐鬼。
余談ですが、記事の資料を探している時にネットで"フランケンシュタインは博士の名前"という惜しい解説を何度か目にして、「あの…その、ヴィクターくんは…大学生…21歳………(・ω・;)」と思ったのですが…。
しかし、同じ解説を私が中学生の頃に担任の先生にされた記憶があるので、中学の担任の先生も映画の記憶の方が強すぎて原作を読んでいないか、原作の事はあんまり覚えていなかったんだと思います。
先生の言っていた"賢い人の脳みそを壊してしまったので悪人の脳みそを使う事に…"という設定も原作にはなく、映画『フランケンシュタイン』(1931年)には存在する設定です。現在は「あれは完全に1931年の映画の解説だったのだ…」と思っております。
私が1931年版の映画を観て違和感がなかったのは、こうやって語り継がれている「フランケンシュタイン」の物語は原作ではなく1931年の映画でほぼ統一されてしまっているからなのでしょう。
1年前の私にも教えてあげたい。
☆参考
フランケンシュタイン (新潮文庫)
※これは原作ちゃんと読んでるので!
フランケンシュタインとは - コトバンク
フランケンシュタイン - Wikipedia
(コトバンクさん……ヴィクターくんを「オカルト研究家」と言い切るの凄いな…しかも否定できない。好き。)
※映画の方
フランケンシュタイン(1931) | 映画-Movie Walker
フランケンシュタイン (1931年の映画) - Wikipedia
ミイラ男
人為的加工ないし自然条件によって乾燥され、長期間原型を留めている死体のこと。エジプトのピラミッドでおなじみである。
それがモンスターとして扱われるようになったのは、ユニバーサルスタジオ製作、『ミイラ再生』(1932年)が始祖とされるそうで…。
ユニバーサル、またお前かーーっ!
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そしてこれがポスター。
出典:
ミイラ再生 - Wikipedia
ウィキペディアによると「原作小説を持たないオリジナル作品である。1921年に世界的な話題を呼んだツタンカーメン王墓の発掘を題材としている」とのこと。
また、この作品について調べてみると、この作品を元ネタとして、『ハムナプトラ』や、『ザ・マミー』が作られたらしいですね。
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…ということは、ミイラ男をハロウィンキャラとして定着させたのはユニバーサルスタジオってことになりますよね……。
☆参考
ミイラとは - コトバンク
※映画の方
ミイラ再生 | 映画-Movie Walker
ミイラ再生 - Wikipedia
結論
ここまで調べてわかったこと
ここまで調べてわかったこと……それはユニバーサルスタジオが強過ぎる………( ゚Д゚)ということ。
というわけで、私達はなんとなく「伝統的なハロウィンモンスター」だと思いこまされているだけで、伝統的というよりはレトロ映画由来と言った方が正確なような気がしてきた、ハロウィンキャラのラインナップでした。
そうか、彼らは映画のキャラクターだったのか。
そもそもハロウィンとは…
そもそも、ハロウィンってなんだ。
発祥の地はアイルランドやイギリスという説がある。古代ケルト、古代ローマ、キリスト教の3つの文化が融合して生まれた。原点はケルト人の収穫感謝祭で、それがカトリックに取り入れられたとされている。
ハロウィーン(はろうぃーん)とは - コトバンク
この時点で現在のハロウィンの姿と結びつきません。
文化を渡り歩くうちに姿を変えてしまったもの…という印象を受けます。日本ではもう既に仮装パーティーのようなもの、というイメージになってる気もする。
「トリック・オア・トリート!」とお菓子をもらってあるく遊びもあまり日本ではお目にかかれない。子供の頃英語教室に通っていた時は教室の子達の家に「トリック・オア・トリート!」しに行く遊びをしたことがありますけれど。
☆参考
ハロウィーン(はろうぃーん)とは - コトバンク
ハロウィンの起源について知りたい。 | レファレンス協同データベース
まとめ
少し「それでいいのかなー」という気がするものの、モンスターの仮装をする目的は「悪霊を追い払う(魔除け)」らしいので、仮面ライダーやプリキュアの恰好でも悪霊は近づかないんじゃないかな。
エジプト衣装がハロウィン扱いされるのは前述の「ミイラの影響かな?」と思うものの、囚人、お姫様、カウボーイ辺りになってくると「悪霊、祓える…??」…と心配になりますが、"自分じゃないもの"に変身する事自体が魔除けになっているのかもしれないですね。
もっとも、これは私の妄想にすぎないことですけれど。
というわけで、伝統的なモンスターとかいろいろ言いはしますが、現在に引き継がれている各モンスターのイメージの歴史はせいぜい80年かそこらがいいところなので、好きな恰好すればいいと思う、という結論です。
少なくとも原作にハマったおかげで「フランケン」、って名称でコンビニのハロウィン菓子とか見ると今年から複雑な気持ちになるようになっちゃったけど……。
複雑な気持ちになりながらも「ハロウィンだから」と買っちゃったんだけど……。
しかし、「フランケンシュタインは卑屈で天才で臆病な大学生のヴィクターくんの名前だから!!!ボルトとかささってねぇから!!」と私が吠えたところでその蓄積されたイメージを私がどうこうできる問題ではないので「楽しく仮装して楽しくお菓子食べればいいんじゃない?」と適当な事を言いつつ、今日はここまでといたします(*^_^*)
参考文献
最近買いました(*‘ω‘ *) 表紙が「ミイラ再生」ですね。
- 作者: ロナルド・V.ボースト,リースアダムズ,キースバーンズ,Ronald V. Borst,Leith Adams,Keith Burns,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1997/03
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